ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
映画ではじめて恒星間ラムジェットを描いた『パッセンジャー』はそれだけでモルテン・ティルドゥム監督に「ありがとう、ありがとう」としか言えないのが個人的な感想である。すでに支離滅裂だが、本当だから仕方がない。しかも、最新VFXで彩られたこの映画は60、70年代のSF映画やマンガの「香り」もするので好きな映画だ。
しかし、内容は問題をはらむ。という指摘は理解できる。できるけど、では主人公のジムの立場に立って弁護してみたい。「宇宙のタイタニック」がコピーにある映画だが、系譜としては男のための恋愛映画だからだ。
『望郷』という映画がある。
本国から逃れた犯罪者である主人公ぺぺがカスバと言う街で顔役として街を仕切っていたがカスバから出れば警察に逮捕される身の上だ。そこにフランスからギャビーという女性がぺぺの前に現れてギャビーに惹かれているのを察した警察が二人を恋仲にするよう画策する。そして計画どおりぺぺは破滅する。
ドラマのキモはギャビーに対して恋心を抱くのは身の破滅だと分かっていながらも、そうならずにはいられないぺぺの内面を描いているところだ。『パッセンジャー』のジムと同じだ。
また題名なら誰もが知っている『レオン』。これも歳の差がありすぎるにも関わらずレオンはマチルダに対して恋心(最初は思慕)を抱いているし。だからこそ「面倒ごとになる」と分かっていながらもマチルダを助けてしまい、破滅する。これもジムと同じ。
これで『パッセンジャー』が男の恋愛映画である。という自分の主張は分かってもらえると思う。男の恋愛映画では男の駄目な部分が強調されて描かれるのが特徴だから、つまり系譜としてはこの映画は『タイタニック』より『her/世界でひとつの彼女』の方向だ。
後半はジムのしでかした事に対する救済するかのように映画は展開する。クライマックスは『スタートレック』シリーズではお約束なアレを思い出させるし、そして何よりもオーロラに対するジムの気持ちは孤独や憧れではなく本心からだと感じられるからだ。多分、「その後」の彼は幸せだったのに違いない。
あの光景を見てしまえば、そう感じるしかないではないか。