ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
みんな観よう!
『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』はトラヴィス・ナイト監督の日本を舞台 -- 架空の日本らしきもの -- していないのにもかかわらず、違和感も感じず、それどころか日本愛に溢れたリスペクトが大きく感じられている映画だ。だから、「ありがとうございました」と首を垂れるしかない。
そしてドラマはナイト監督の前作『パラノーマン ブライス・ホローの謎』と同じ構造をもっている。主人公の特殊な能力とそれからくる孤独、そして「物語」の件だ。しかし、『パラノーマン』と『KUBO』の違いは前者がコメディな展開なのに対して後者はセンチメンタルな展開になるところだ。
今回はこのブログに触発されてかきました。↓
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ここからはネタバレになります。 観ていない方はおススメできません。
Kubo and the Two Strings: Official Trailer (Universal Pictures) [HD]
吹替「瞬きすらしてはならぬ」
字幕「瞬きをするなら今のうちだ」
『KUBO』の見所はこれにつきる。一コマづつ動かして撮影するストップモーションアニメーションがその「瞬き」の魅力そのものだから。それに素人からみても技術は『パラノーマン』よりも上になっていることも分かるし、正直にいえば、この90分を至福としてただ楽しめばよい。それだけだ。
だから蛇足を承知で書けば『KUBO』が描くのは箱庭の世界でもある。さら誤解を与えそうなのを承知で付け加えると絵巻物の世界だ。ストーリーは絵巻物をめくるような感じで進行する。
それが感じられるのは 夏(盆)→ 冬(雪原)→ 秋(紅葉)→ 春(山中) と現実ではありえない描写があるから。非現実だ、季節はバラバラだし一年も経っていない。
もちろん、それは奇をてらったものではなくてクボとサルとクワガタの関係の変化も描いている。想像してほしい、三人が仲良く歩く姿が山中ではなく、雪原だったら観客がしんみりできるのか?できるわけがない!だから、これで良いに決まっている。
そして、これはみんなのではなくクボだけの「物語」を我々は観ているから。人によっては人それぞれの「物語」がある。『パラノーマン』からのナイト監督の特徴といってもよい。季節の順番も時間経過のいい加減さも納得できる。
だから、最後にクボによって人になった月の帝は村の人々に嘘を教えられた。というよりも、「新たな物語」を与えられたと見るべきだ。
裏付けとして描かれるのはクボの母と闇の姉妹の関係がある。クボの母は半蔵との恋によって「新たな物語」が与えられた。つまり不浄な存在である人になった。それで闇の姉妹は彼女を嫌悪する。それは対照的に『パラノーマン』では「自分の物語」をもたない付和雷同で弱い人々をゾンビとして描いていたことからも分かる。
観終わったあとにセンチメンタルな感情にさせる『KUBO クボ 二本の弦の秘密』は「物語」が本来もっている力強さを描いてもいるのだ。
みんな観よう!(念を押しました)
オリジナル・サウンドトラック「KUBO クボ二本の弦の秘密」
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