ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
『ギフテッド』はボート修理で裕福ではない主人公のフレッド。亡くなった姉の子メアリーと一緒に暮らしていたが、メアリーが数学の天才であることを周りに気づかれたことをきっかけに音信不通だった裕福な母(メアリーにとっては祖母)であるイブリンとの親権争いになり、それを通して自身とメアリーの関係を見つめ直すヒューマンドラマだ。
ここで、さり気なくドラマに絡んでいるのはナビエ‐ストークス方程式だ。
粘性流体(液体、気体)のふるまいは粘性が0になればオイラー方程式にしたがう。それはニュートン力学にも繋がるから解析学(かいせきがく)の歴史から見れば、ナビエーストーク方程式の正しさが証明されれば、色々な応用とさらなる展開が見込まれる。
しかし、ナビエーストーク方程式の正しさはまだ証明はされてはいない。乱暴にいうと、粘性が0以上になると条件よっては乱流が起こるために解析学には繋がらないからだ。粘性流体の滑らかさをどう数式で記述するか、この問題のキモはここにある。前に話題になった「飛行機が飛ぶ原理が分からない」もここからきている。
ちなみに現実では数値的、ざっくりいうとシミュレーションが進歩している。前に書いた飛行機も、そして自動車のデザインもそれからの情報を元にしている。しかし、あくまでも、その条件付きのモデルの話であり、統一された本質の話ではない。
『ギフテッド』はメアリーが数学の天才だったからはじまるドラマだ。つまり義父フレッドの「友達を作って普通の生活」か、祖母イブリンの「才能を極めた天才の生活」の異なる世界の流れのどちらを取ればメアリーには幸せなのか?がテーマだ。どころが、この問題の解はここでは写真でしか登場しない人物が示すのだ。条件 -- その人にとっては頼み事であり、フレッドにとってはある決断 -- を変えることでフレッド世界の流れとイブリンの世界の流れを統一してメアリーにとって良い流れの世界にする。これにミレニアム懸賞問題であるナビエーストーク方程式が絡むのだ。粋でニクイ構成ではないか!
そうゆう意味ではメアリーを演じたマッケンナ・グレイスの演技も相まって、『ギフテッド』は実に愛らしい小品となっている。
クリス・エヴァンス出演 映画『gifted/ギフテッド』予告
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