ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
『鋼の錬金術師』は架空の世界を舞台にした冒険活劇だ。主人公のエド(エドワード)はその世界でいうところの科学らしい錬金術を使って、子供のころあることをして肉体を失ってしまった弟のアル(アルフォンス)のために、それが取り戻せる賢者の石を探しているうちに、それを巡る陰謀と謎に周りの仲間と共に巻き込まれてゆく話だ。
最初に断っておくと、自分は原作もアニメも途中で挫折しているし記憶も曖昧だ。だから拙い映画を観てきた記憶と薄いSFファン知識として書くと、この映画には「異世界を見ている」感覚がない。さらに卑俗にいうと「異国情緒(イコクジョウチョ)」が無い。感じられない。
もう少し付け加えると、これは「自分達が日頃している習慣(しゅうかん)や慣習(かんしゅう)を違う視点から見る」感覚だ。SF映画『2001年宇宙の旅』も『スター・ウォーズ』も『ブレードランナー』もそれに新しさが、「あった、感じられた」、からこそSF映画の名作として名が残っている。といってもよい。『鋼の錬金術師』はそれが無い、感じられない。それだけなのだ。
実は、それだけが欠点で、あとはすべて真っ当な出来だ。ドラマは今年公開された『ラストレシピ』よりも優れているし、VFX技術も白けるところはない。
それにハリウッドだって、それが必ずしも上手くゆくとは限らない。これも今年だと『ゴースト・イン・ザ・シェル』もそれが物足りない映画でもあった。
いわゆる「世界観が感じられない」はこの足りなさからくる。原作の忠実な再現もいいが、大切なことはエドとアルと周りの人々が「この世界でどうゆう様に生きている」のかを観客に感じさせなければ、予算をいくら使っても無駄になるということだ。
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