ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
28世紀の宇宙。ファーストコンタクト以来、人類は多種多様な異星人達と交流を続けて遂に膨大な宇宙都市「千の惑星の都市アルファ」を築くまでに成長していた。銀河をパトロールする連邦捜査官のヴァレリアンとローレリーヌはある惑星での任務をきっかけにアルファに訪れ、ある将軍の護衛につくが謎の異星人によって連れ去られてしまう。チャラいヴァレリアンと生真面目なローレリーヌは反目しながらも将軍救出の任務に就いているうちに。やがて恐るべき行為で闇に葬り去られた過去を知ることになる。
原作を知らない上での無知を承知で邪推なことをいえば、この映画の本筋(陰謀)はロシアのシリア空爆をヒントにしているのかも?首謀者の名前が英語の10月を連想するし、10月だと10月革命でソビエトを連想するし、ソビエトだとやはりロシアになってしまう。
そうすると一見無関係だと思われるイーサン・ホークはやはりアメリカを連想 -- イーサンなら誰にでもアメリカの俳優と分かる。-- してしまうしリアーナはズバリに難民なので難民問題を戯画化して描かれるいるのかも?もしかしたらローレリーヌの事を聞かないあのエイリアンは中東のどこかの国の複合モデルなのだろう。あのクラゲもどこかの習俗をヒントにしたのかもしれない?だとしたら、やっぱり、あのエイリアン達と千の惑星の都市があるアルファ宇宙ステーションは欧州連合になるのか?
こんなどうかしてる連想または妄想をしてしまうのはリュック・ベッソンが原案・脚本(リチャード・ウェンクと共同)した『ネイビーシールズ ナチスの金塊を奪還せよ!』でアメリカのネイビーシールズが主役なのにナチスがフランスから簒奪した黄金をボスニア・ヘルツェゴビナ紛争解決に使うことで、形の上で「フランスが紛争解決に寄与した」ことになっている。-- もちろんロシアの兵器もこき下ろされている。-- という妙な構造をみたせいなのかもしれないが……。
しかし、どうやらそれは政治的なメッセージではなく、あくまでもベッソン監督の個人的な発露なのはヴァレリアンに「フランス語は嫌いだ」と言わせているので、それほどこだわる部分ではないし、なによりもそれを込みで、ここで文字通り描かれているビジュアルを含む「風景」はベッソン監督の理想を投影していると見た方が良い。
理想。といえば、ここで描かれる社会は日本の「他を思いやる社会」でもなく『ズートピア』で描かれた「他との違いを認識して良い社会にしてゆく」とも違って、どちらかといえば「他とのそれぞれの主体性を尊重する社会」の理想が描かれていると感じる。
主体性とはざっくりいうと「他からなんの束縛を受けずに自身のルールによって行動を決める」だ。法を守ろうとしていたヴァレリアンにローレリーヌが説いていた「愛」もそれになる。ベッソン監督の考える理想(社会)は手続きを超えた人の心そのものなのだろう。日本やアメリカとも違う欧州的価値観の理想なのかもしれない。もっとも自分も先に『フィフス・エレメント』を観ていなければ気付かなかったことでもあるが。
変な感想になってしまったが、作品の出来そのものより、怪獣好き宇宙船好きの自分からみれば、この映画は魅力的なエイリアンが多く出演する「エイリアン満漢全席」であり、最高の「エイリアン接待」映画でもあるので。自分としては大いに楽しんだ。VRを使ったアクション等の画などもGOOD!だ。ハヤカワやかつてのサンリオのSFではなく子供向けのポプラ社や岩崎書店のSFような楽しさがある。それがこの映画だ。
ヴァレリアン 千の惑星の救世主 《2枚組》【帯&解説付輸入盤国内仕様】
- アーティスト: アレクサンドル・デスプラ
- 出版社/メーカー: Rambling RECORDS
- 発売日: 2018/03/21
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