ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
22世紀後半、宇宙船イカリエ-XB1は生命探査のためアルファ・ケンタウリ系へと向かう途上に漂流している宇宙船と遭遇する。2名が調査にむかい、原因不明の死体が散乱する中、搭載されていた核兵器が爆発して2名は死亡してしまう。悲劇の中、イカリエ-XB1は航海を続けるが、謎のダークスターからの影響でイカリエ-XB1の乗組員は謎の疲労に襲われ眠りはじめる。
この映画1963年のチェコスロバキア制作の映画なので、ドラマにちょっとだけ理解しがたいところがある。簡単に言うと「イカリエ-XB1の乗組員はどうして自動化にあんなに抵抗を感じるか?」だ。SF作家ロバート・A・ハインライン著『夏への扉 (1956)』で冷凍睡眠、つまりコールドスリープのアイディアは当時から、すでにあったので、それを使えば空気も食料も節約できるのに、それを制御できる自動化というアイディアをどうして採用しないのか?しかも、台詞で「目的地まで15年かかる」といっているのに映画内ではそれが感じられないのもかなりノイズになっている。
答えは簡単で。当時の共産圏では「自動化の原理であるサイバネティックスが疑似科学、つまり今風に言うとトンデモ科学として認識されていたから。つまり「子供だまし」の概念に位置づけられていたかららしいので、リアリティを逆に削がないための配慮から、あんな設定になっているのだろうし、もちろん当時のソ連型社会主義の力強さも込みになっているからこそのアレなのかもしれない。
どうしてそんなことを知っているのかといえば、この原作は『ソラリスの陽のもとに 』でSFだけではなく文学者としても著名なスタニスワフ・レムの『マゼラン星雲 (1956年:未訳)』だからで、告白するとこれを書き始めてスタッフにレムの名前があるのを知ってピンときただけなのだが、なんだろうね「うーん」としか答えられません。
『宇宙大作戦(1966)』や『2001年宇宙の旅』に影響を与えたと言われている映画だが、観終われば既視感があり過ぎて新鮮さがまったく無いから、「昔こうゆう先駆的なSF映画がありました」以上の感想が湧かない。つまりSF&映画ファンの射幸心や満足感をだけしか満たさない可能性があるので、簡単にいうと「観る人を選ぶ」映画だ。観るならそこを覚悟して下さい。
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