ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
『フィールド・オブ・ドリームス』 (1989)で「保守とは何か、良さとは何か」について書いたから、今回は「リベラルとは何か?良さとは何か」について書く。
ならばコノ作品。
なぜならココでの104分にリベラリズムの真髄が語られているからだ。
内容は、どんな動物とも一緒に共存している架空の世界を舞台に草食動物なウサギのジュディが憧れの警察官になったが、周りは肉食動物で占められていて自身の理想と現実とのギャップに悩みつつ、ある事件を解決するためにひょんな事から知り合った肉食動物のキツネであるニックと組んで捜査をはじめたら、そこで分かったのは肉食動物に顰む本能を刺激して凶暴化してしまう方法だった。かくして動物達の理想郷だった世界は草食と肉食で分断される事になったが、どうなるのかの流れだ。
コノ作品は人種多様性をアニメ仕立てに、いわゆるPCこと政治的正しさ・ポリティカルコレクトレスについて本格的に語っている作品と言われているが 、別の側面に目を向ければリベラリストとは何か?リベラリズムとは何か?についてものすごく砕いてわかりやすく語っている作品でもあるのだ。
むしろ、そっちが重要。
その前にチョイと付け足すと、リベラリスト・リベラルの根底にあるのは「理性に対する絶大な信頼」がある。
理性とは物事の筋道を考えてそれに従って言葉や行動したりする能力を指す。そして、それが本能という野生で行動する動物と人間との違いである。
これが基本。
だからリベラルは「常に理性的であること」を指標にしているし、そうしていないものに対してはそうするように導く。
これが啓蒙活動。
コノ作品でもチーターのベンジャミンに「これは言ってはいけない事だよ」みたいな台詞があるが、これがソレ。
うっとしいと思われようが、リベラリストは常にその精神を持っている。
ただコノ作品が真摯なのは、そうしたリベラリスト等も偏見による間違いを犯す事があるところうを隠さずに描いているところだ。ヒント:ナマケモノ
さらに、コノ作品ではリベラルの限界まで描写する。そう、肉食動物の本能についてだ。
通常の作品ならここを解決するか、その道筋を示そうとするが、ソレをやらずに、それを煽った者を逮捕はするが、根本の溝は埋まらない。
だが、それを乗り越えよう!というメッセージを残してエンドする。
リベラリズムは保守のように到達点みたいな決まった形は無い、無いからこそ常にアップデートしつづける。
理性が基盤にあるので、人権に軸さえあればいかようにも変化できるのがリベラリズムに強みだ。
だからコノ作品はリベラリズム賛歌の作品でもある。
監督:バイロン・ハワード リッチ・ムーア
共同監督:ジャレッド・ブッシュ
製作:クラーク・スペンサー
製作総指揮:ジョン・ラセター
原案:バイロン・ハワード リッチ・ムーア ジャレッド・ブッシュ ジム・リードン ジョシー・トリニダード フィル・ジョンストン ジェニファー・リー
脚本:ジャレッド・ブッシュ フィル・ジョンストン
編集:ファビエンヌ・ロウリー ジェレミー・ミルトン
音楽:マイケル・ジアッキノ
音楽監修:トム・マクドゥガル
データと画像は映画.comより