ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
今回は『ブラック・サンデー』について語ってみたい。
駄菓子のことではない。
主演ロバート・ショー
サクっと終わらせたいが……
しかし、まあ……
コノ作品は世界三大通信社、イギリスのロイター、フランスのAFPに並ぶアメリカAP通信で働いていた『羊たちの沈黙』のトマス・ハリスの処女作であり、アメリカ本国で大量殺戮テロを起こす者とそれを防ごうとする者の攻防の物語。
しかしながら、現在の複雑な世界情勢がコノ作品を語りにくくしているのは確かで、原作やコノ作品で計画されたテロは2001年アメリカ同時多発テロ事件で、背景も含めてもはや過去となった。そうと言い切れるくらいに現在は縺れている。
なので、その辺りは今回は触れない。触れないが、フランケンハイマー監督がテロリストを単純な悪役として描いていないのは確か。節々の台詞に喋らせているし、こんなシーンもあるから。いわゆる花を持たせている。
最初80年代アクションに馴染んでいた自分にはこのシーンにまどろこしさを感じたが、今となってはソコは監督なりの配慮だったと見るしかない。
それでは、コノ作品では何を描いているのかといえば、ショー、ケラー、ダーン3者による意地の張り合いなのだろう。
まずダーン。彼の役どころはベトナム帰還兵で捕虜として非道い扱いを受けたのにも関わらず祖国は冷たかった。だから、安全な場所で惰眠をむさぼる奴らに鉄槌を下すためにテロリスト達を利用して事を起こそうとする。
そしてケラー。彼女は男ばかりのテロリスト等の中でその存在感を示そうとして男達が難色を示す攻撃行為に邁進する。-- 多くの識者が指摘しているとおり彼女は同じ著者の『羊たちの沈黙』におけるクラリスの雛形なのは容易に推察できる。
最後はショー。彼が演じるイスラエル諜報部員は自分の仕事に疑問を持ち悩んでいたが、ある事をきっかけにケラーとダーンのテロに対して手段を選ばない行動してゆく。
つまり、この3者は私事でココでの事態に関わっていて、その意地が衝突するのがあのクライマックス。
だからドラマはあの3人が上空で出会うシーンでもう終わっているのだけども、そこからだとやはりスタジアパニックのシークエンスは蛇足気味。そのまま海まで繋留してダーン!で終わらせれば締まっていたのに、その辺りの事情は自分が購読している八天鐘さんのブログにも書かれていたのでこちらを。
まぁ、当時はパニック映画全盛期でもあるので、そのノリで期待した人もいたのだろう。音楽はジョン・ウィリアムズだし。
— 念の為に言っておくと、あの頃のウィリアムズはスター・ウォーズやジュラシック・パークやハリー・ポッターのではなくて、ポセイドン・アドベンチャー、タワーリング・インフェルノ、大地震などのパニック映画のジョンだったのよ。
しかし、それは小さな疵であって、作品全体に致命傷は与えてはいない。
そして、コノ作品は後に、スピード、ナイト・ホークス、エグゼクティブ・デシジョン等々のアクション作品に影響を与えるのである。
VODで鑑賞。
スタッフ
監督:ジョン・フランケンハイマー
脚本:アーネスト・レーマン ケネス・ロス
アイヴァン・モファット
原作:トマス・ハリス
製作:ロバート・エヴァンス
製作総指揮:ロバート・L・ローゼン
音楽:ジョン・ウィリアムズ
撮影:ジョン・A・アロンゾ
編集:トム・ロルフ
Wikipediaより引用