ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
今回は、隠れた、というよりも、忘れ去られた作品について語ってみたいと思う。
内容は犯罪とテロへの対策のためにアメリカ国内での法執行機関による通信傍受の権限拡大「通信の保安とプライバシー法」を法案として可決しようとする動く傍受を主とした諜報機関NSA(国家安全保障局)の高官が仕掛けた犯罪を主人公のウィル・スミス演じる弁護士が元政府の工作員として働いていたジーン・ハックマン演じる謎の男とタッグを組んでそれを暴いてゆく流れになっている。
さて、コノ作品は盗聴が題材なので要素というかレイヤーが多い。スグに気がつくのは盗聴なので元工作員のハックマンはどう見ても1974年の社会派スリラー『カンバセーション 盗聴』のハリー・コールを連想するのは当然として、NSA高官に殺される人物はCIAの民主党本部盗聴事件(ウォーターゲート事件)を描いた1976年の『大統領の陰謀』で新聞社ワシントンポスト紙の編集主幹を演じたジェーソン・ロバーツ。
‐‐ ちなみに、ガブリエル・バーンもバーンとチョイと出ているのは、『エンド・オブ・バイオレンス』(1997)に対する目配せでしょうね。「わかってるよ!」的な。
また、コノ作品で中心となる「通信の保安とプライバシー法」とは後に2001年アメリカ同時多発テロで同年発効された米国愛国者法からのNSAによるPRSIM監視プログラムとほぼ同じなってしまった。テロとか犯罪を匂わせるワードは国家機関にすぐに傍受されてしまうシステムがソレ。
ただ、フィクションなのでウソもある。劇中で主人公が敵から必要に追跡されるシーンがいくつかあるが、情報という点をすぐさま分析して線で繋いでしまう技術は現在でも無いし、当然ながら公開当時でも無い。-- この辺りはウソを通す手段として超人的ハッカーを設定していて、それを演じているのがスターになる前のジャック・ブラックだっーのを再鑑賞で気がつきました(苦笑)。
そんな、色々な要素が重なり合う話題性(公開当時)だったコノ作品だが、根底としてあるのはヒッチコック的作劇であるということ、もっと具体的に言ってしまえば、『北北西に進路を取れ』(1959)や『知りすぎた男』(1956)などの巻き込まれ型スリラーだというところ。
コノ作品も犯罪と無関係だったのに、ふとしたきっかけで巻き込まれて窮地に追い込まれてそして反撃に転じる展開。ハイテクがまぶされているが少なくとも脚本はそう意識して書かれているし、撮ったトニー・スコットもそう意識して演出している。
元々トニーは古典なプロットを現代にアップデートできる腕をもった監督だ。そして、観ている間はそう思わせないところがスゴイ。
なので 、盗聴(ハイテク)という話題性が風化しても作品としての強度は高めで今観ても面白い。
クライマックスがイマイチ盛り上がらない、という批判もあるけど、語るべきものを終えたらさっさと終わらせる、というところもヒッチコックで、自分としては気持ちの良い終わり方だと考えている。
BDで鑑賞。