ここでは題名を恣意的に表記します。[敬称略]
C・イーストウッド監督×トム・ハンクス主演『ハドソン川の奇跡』予告編
大傑作!である事は間違いない。間違いないのだが、どうしてこれが大傑作なのかが自分には分からない。
この映画の構成が妙だ。本来なら事故のシーンは序盤かまたは後半のクライマックスに描写されるのに、まったく違う。
本来の構成で序盤でそれが入るのならそれはサスペンスを基調にしたドラマ展開だし、クライマックスに入るなら情緒に訴える感動を基調にしたドラマ展開だと分かる。
しかし、この映画は違う。ここでは中盤にバードストライクによる全エンジン停止の描写が入るのだから。
この意図は分かる。バードストライク以前はサリー機長の「自分の判断は正しかったのか?」の自身への問いかけであり、間違っていれば、それは長年空を飛んでいた男の人生を揺るがしかねないものだと。
バードストライクの以後は打って変わって自分の判断の正しさを確信したサリー機長が誇りをもって公聴会に出る。
つまり、この映画は歴史的な事故を誰もが共感できる「感動」ではなくて、サリー機長の内面のみを描いているだけなのだ。
つまり、小説に例えるなら読者のリテラシーがある程度必要な純文学の芸術的な要素を含んででいる。
にも関わらず、終わってみれば、誰もが観れる通俗的なエンタテェーメントと成立している。どうして?
まあ、それは「イーストウッドだから」の一言で納得はする。いや、今までしてきたけど今作ばかりは、ここがどうしてもスルーできないでいる。
どうしてだろう?