ここでは題名を恣意的に表記します。[敬称略]
『デッドプール』を観ました。
デッドプール : 作品情報 - 映画.com
今回のキーワード -- 第四の壁を超えたのは誰だ? --
「いやぁ『デッドプール』面白かった。」
「びっくりしたのは地方都市で平日の夕頃なのに席が3分の一に近いところだったな。日本では知名度が無いに等しいはずなのに、どうしてそこまで人気なのかと」
「まぁ、そこはネットからの口コミがうまくいった例じゃないの。それに多分リピーターもいるのかも」
「そうかね」
「それにアメコミなのに『バットマンVSスーパーマン』『シビル・ウォー』とか暗くて硬いのが続いていたから一服の清涼感があるのも確かだし」
「それなら『アントマン』があっただろう」
「そうか、もう一人のオレは『アントマン』贔屓だから、そんな反応なんだ」
「美女にモテまくりでヤリまくりのヒーローなんぞよりも、一人娘の心を引き止めるために必死なるオジサンがヒーローの方が良いに決まっているだろう!」
「何だよその決め付け方!」
「だいたい『デッドプール』はズルイんだよ。原作どおりとはいえ観客に向かって語るなんて」
「いわゆる “第四の壁を超えた” ってやつ?そういえば『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のガン監督もそれに近い発言をしていたな」
「その真意は分からないが、オレのはそれとは違う」
「へっ?」
「そもそも “第四の壁” とは何だ?」
「この場合はキャラが観客に「見られている」を自覚して事だろ。いやゆる “メタ発言” がそうだろ。それにコメディではよくやる手法だし」
「そう、そこだよ。そこ、そこ」
「はい?」
「それを超えたら『デッドプール』はコメディ映画になって笑い者になる筈なのに、最後で何故かキチンとヒーロー映画になっているのはどうしてだ?よしんばシリアスなら第四の壁を越える必要は無いし、超えたらそれはうっとしいだけで愛されるにはならないはずだ。納得できん」
「……それはこの手のヒーローキャラ設定で第四の壁を越えることは笑いにでもしないかぎり、そのキャラに反発するはずなのにそうなっていなってこと?」
「そうだ!」
「それにはひとつ仮説を立てて語る事ができるかな」
「それはオレの役割のはずだが……それはどんな仮説だ?」
「第四の壁を超えているのはデップーではなく観客の方が超えている。説」
「?」
「(おねーさん声で)みんなー、ヴァネッサがエイジャックスに襲われているわよー、みんなの応援でデップーが現われるから、一緒に呼びましょう、せーのデップー!デップー!デッドプール!!」
「……気持ち悪い」
「実はオレもそう感じていた。すまん悪かった」
「いや、意図は分かった。 つまり『デッドプール』での “第四の壁” を超える目的は「観客を作品世界に取り込む」ためではなく「デップーに声援を送るために、共感をもたせるために」壁を越える訳だ」
「その目的はおそらく、観客の子供心を呼び覚ます “機能” をもっている。これがデップーが愛されるヒーローの要因だろうね」
「ヒーローショーの手法をこの映画では使っている訳か」
「その気持ちを納得させる解釈はそれしかないと思うよ。それでデップーが反発よりも好意として観客に向かい入れられた大きな要因じゃないかな」
「むむむっ」
「しかし、本音はそうじゃないだろ。あいつ、あいつは」
「そうだ、あいつは、あいつは」
(同時に)「女にモテすぎる!!」
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