ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
今日のポエム
それはヒーローになり損ねた男の物語
映画とはポエムです!ポエムとは映画でもあります。それでは大いにポエムちゃいましょう!
そして、キーワードは。
もうひとつのエンドゲーム!
今回はネタバレスレスレの褒めモード。
注釈:ここでのエンドゲームとは『アベンジャーズ エンドゲーム』のラストシーンについてですが、今回は特に触れていないで御安心してください。ただし、『エンドゲーム』のラストシーン他、アメリカのヒーロー映画のどれかを観ていると本作をより楽しめるかと思います。
まず、最初に本作は結構に変な映画だ。まず題名が『ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男』なのだが、これが日本リリースによくあるキャッチーな引っ掛けタイトルではなくて原題の ‟The Man Who Killed Hitler and Then the Bigfoot” とおりで、ネタバレもなにもそのまんまだ。それに内容も……
エライ人「ビッグフットを殺ってくれ」
主人公ことヒットラーを殺した男「断る」
オレ「まて、ビッグフットってUMA未確認生物だぞ!いるの前提⁉」
そんでもって、そのビッグフットは前兆も布石もなしにいきなり現れて主人公と闘うし、もはやスリラーやアクションやサスペンスの定石など完全に無視。
だから普通なら「駄目だコリャ」なるはず。なのはずだが、これが不思議と味がある感じに仕上がっている。
だから、本作はスリラーでもアクションでもサスペンスでも無く、いわゆるヒューマンドラマだ。つまりは感動作なのだ。
何ソレ?とか、思ったかもしれないが、これが結論だ。
つまり、ヒットラーとビッグフットで泣かすのが本作だ。
ネタバレとか言うな。タイトルですでにネタバレや!
実は、本作は自分の半生を捨てたのにもかかわらず世界を救う事ができなかった男の晩年を描いている。つまりヒーローになり損ねた男のドラマなのだ。事実、本作で主人公はヒットラーを殺しても世界は救えなかったし、告白できなかったが相愛だった女性とは死に別れて添い遂げることもなく年を取り、身内は弟だけで、今やただ死を迎える老人になっているのだから。
もちろんそれを、ちゃんと画で作っている。さっき、いきなり現れて主人公とビッグフットと闘う、と書いたが、その展開は時間経過を飛ばすジャンプカットという手法だ。
つまり、本作はスリラーでもアクションでもサスペンスでも無い!と宣言をしているのに等しい。そしてビッグフットと対峙するシーンではそれを象徴する画にもなっているからだ。
さらに、主人公を演じているのがサム・エリオットなので晩年感はマシマシだ。
また、別の視点から紐解けば、本作はヒーローになり損ねたために、それを悶々と悩み悔いていた男が、ビッグフッドを倒す事で、ヒーローになり損ねた男から普通の男に戻って、いずれやって来る死を向かい入れる感情を描いてもいる。ヒント:ラストシーン
だから、アメリカ映画というよりも、どちらかと言えばフランス映画の臭いがする作品なのだ。DCやMCU、例えばキャプテンアメリカなどの、いかにもアメリカンなヒーロー像のアンチかカウンターとして本作を撮りました。と言われたら「なるほど!」と納得してしまうくらいに。
ひょっとしたら監督はフランス出身なのかと思いきや脚本・監督の名はロバート・D・クルジコフスキーなので、どう見てもフランスぽっくないし (偏見) 経歴・作品暦ともサッパリ分からず、逆に自分がモヤったぞ。まぁ、『悪魔の毒々モンスタ―』(1984)や『カブキマン』(1990) の監督ロイド・カウフマンも日本の大監督 溝口健二のファンなので、本作のクルジコフスキーもひょっとしたらフランスヌーベルバーグのフランソワ・トリュフォーあたりのファンかもしれない。そして、もしかしたら、この一作で終わってしまう可能性が無きにしもあらずだ。(偏見その二)
だから、皆んな観よう。そして本作を伝説にしよう!
終わりだ!
ついでに書いて置くとプロデュースに、あの社会派監督ジョン・セイルズと特殊視覚効果ダグラス・トランブルが入っているのが、また伝説&晩年感が深まるという……。
VOD鑑賞。
The Man Who Killed Hitler and then The Bigfoot - OFFICIAL TRAILER