ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
DCコミックのヒーロー『バットマン』を日本を舞台にして日本のクリエイターが集結してアニメーション化した映画。ゴッサムシティで怪しげな実験をしていた悪漢ゴリラグロッドを止めるためにバットマン達は突入するが他のヴィランと共に日本の戦国時代へとタイムリープしてしまう。そこは従来の歴史ではなくジョーカーを中心としたヴィラン達の戦国地図へと変貌した世界だった。果たしてバットマンはジョーカーの野望を制して元に戻ることができるのか?
勧・善・懲・悪!
ドラマもなにも、この映画の魅力を一言でいえばこうなる。監督・水崎淳平と脚本・中島かずき両氏がこの映画でお手本にしたのはアダム・ウェストのテレビ番組『バットマン』なのだから。ちなみに自分がかろうじて覚えているのはティム・バートン監督『バットマン』が公開される前にテレビ放送された映画しか知らないくらいだ。それだって覚えてもいないのかも。(弱気)
Batman: The Movie (1966) - Theatrical Trailer
印象としては「ゆるいカッコよさ」、略して「ゆるカコ」に感じてしまうのがアダム・ウェストの特徴ともいえる。
だけれども先述したティム・バートンや、それを受け継いだジョエル・シュウマッカー監督のバットマンも、そしてリチャード・ドナー&リチャード・レスター監督の『スーパーマン』も洗練されてはいるが本質は「ゆるカコ」だ。
しかし、クリストファー・ノーラン監督『ダークナイト』以降ヒーローもシリアス路線が決定的になる。VFX技術が発達したせいもあるだろうが主な背景はやはり9.11アメリカ同時多発テロ事件だろう。それがなかったら、『ダークナイト』は多大な支持は得られなかった可能性があるし、DCの作品の色も変わらなかったかもしれない。もっとも、その潮流に乗れたのはDCよりも『X-MEN』で先行していたマーベルだったのが何ともなのだが……。
だけども、『ニンジャバットマン』は日本人スタッフが作ったために、その影響からヒョンと抜け出だしている。「バットマンと、かけまして戦国時代と説く。その心は?」と、いう大喜利のお題を大真面目に描いて魅せたのがこのアニメだ
そして、中島かずきはこれに『仮面の忍者 赤影』もお手本に付け加えていると発言している。赤影といえば巨大な化け物と主人公達が戦ったり、巨大な凧に乗ったりしての活躍する活劇だ。だから観終わると『ニンジャバットマン』はこの二作品の特徴が如実に表れているのがハッキリと分かる。
また、このアニメ思わぬ魅力も復活させた。これも先述した時代劇の勧善懲悪の楽しさも復活させたのだ。
勧善懲悪とは文字通り「正義は勝つ!」というドラマにしては単純すぎる設定で構成されている。だから、やるべき事は三つだけ「ヒーローをカッコよく見せる」、「悪役を魅力的に描く」、「様式(お約束)を上手く出す(キメる)」だ。
ヒーローはバットマンだし、悪役はジョーカーなのはすぐに分かるが、お約束をキメる。はピンとこないかもしれないので補足すると「このポーズを見せると悪は必ず敗れる」を示した記号だ。平たく言えば、水戸黄門の印籠であり、暴れん坊将軍のアップであり、遠山の金さんの桜吹雪の入れ墨のことでもある。この映画ではバットマン忍者の印を組むシーンでそれは示されている。「どうして印なの?」と問いてはいけない。何故ならそれは、ジョーカーの野望が敗れた瞬間を示すためだけに存在して、勧善懲悪の爽快感をより強調するためだけに必要だからだ。ただのお約束だからだ。
もちろんその前フリとしてバットマンのハイテク装備を使えなくして、コスチュームを鎧装束の姿に変え、敵役に忍者のクナイを打ちつけ、真剣白刃取りまでしているのだから。このアニメのバットマンは時代劇の主役として描かれているのが分かる。
さらには中盤ジョーカーにある事がおこるのだが、それが勧善懲悪の精神「罪を憎んで人を憎まず」なのだから徹底している。そして、それらを覚えている人ならピンとくるが、これらの時代劇の勧善懲悪の楽しさも「ゆるカコ」だ。アメリカと日本「ゆるカコ」同士で結ばれているのが『ニンジャバットマン』なのだ。
もっとも、それは計算ではなく、鎧装束のバットマンもジョーカーのあの変わりようも「面白そうだからやってみた」なのは何となく分かるし、アイディアを出せるだけ出して物語は後付けでこしらえた感が強い。それが見事に決まったのがこのアニメだ。
とっても楽しいぞ!
Batman Ninja - Anime Trailer (2018)
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