ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
宇宙からの侵入者によって絶滅してゆく人類を描いたパニックSF『スカイライン -征服ー』の続編。妻の死のショックから立ち直れずに刑事を休職中のマークは同じくショックで立ち直れないで問題を起こす息子トレントを市警から引き取りに行った帰りで地下鉄に乗った時、正体不明の何のショックで列車が停止してしまう。無線からの「光を見るな」のメッセージに困惑しながらもマーク達は途中で合流した同僚と共に脱出を目指すが……。
『ゴッドファーザー』家族愛に暴力を挟んだ映画だった。
『グロリア (1980)』は疑似親子に暴力を挟んだ映画だった。
『レオン』は年齢差の恋愛に暴力を挟んだ映画だっだ。
『リーサル・ウェポン 』はホームコメディに暴力を挟んだ映画だった。
と、暴力とはサンドイッチのパンのごとくの存在で、挟まれば中身がどんなものでも年齢性別関係なしに誰もがちゃんと娯楽として味わえるという、万能性を持っている。
そして今作の暴力で挟まれたのが「宇宙人」だ。それ自体は珍しいことでもない。過去には色々な作品にもあったからだ。しかし、分岐点として誰もがすぐに思い出すのはジェームズ・キャメロン監督『エイリアン2』だろう。
『エイリアン2』はSF映画での思い込み「宇宙人は光線銃で殺す」を打破した映画だった。本来なら思いつかない「宇宙人を銃でぶっ殺す」。その新しさに誰もが痺れた。上記のパンでいうなら生ではなく焼きパンにして食感を変えて新鮮さを出してきた。だから、この映画以降、宇宙人は銃で殺せる対象になったし、さらに己の肉体一つで上位的な存在である宇宙人を倒せる『プレデター』まで誕生した。
そしてキャメロンがSF映画なのに銃にこだわったのはリアリティ云々より「それが、カッコイイ!!」からに決まっている。
さて、今作『スカイライン 奪還』に入ると、「宇宙人」を挟んだ暴力のパンは東南アジアの格闘技シラットを世界に知らしめた映画『ザ・レイド』だ。
どうしてシラットではなく『ザ・レイド』なのかはアクション映画で信頼している、しーまんさんのブログで詳細に解説しているのでそれを読んでほしい。(ただしネタバレ有り)
自分が分かるのはシラットだけならイコ・ウワイスだけでも充分にもかかわらず『ザ・レイド』敵役だったヤヤン・ルヒアンまで出演しているからだ。もう「必然性があったから脱ぎました」のレベルを超えた「必然性はないが、そうしないとカッコウがつかないから」に決まっているからではないか!だから、パンを焼くだけでななく小麦粉から麦芽に変えたくらいの転換をここではした。
どうしてそうまでしてこの二人を出したかったのは分からない。だが最大の理由はリアム・オドネル監督以下、作り手たちが『ザ・レイド』のファンだからに決まっている!--もちろん『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』での二人の扱いに不満をもっていた可能性は高い。
その強引な結びつきで最終的には何が生まれたかというと「面白かった」とか「楽しかった」とかとは別の「何か言葉では形容しがたい高揚感」が沸き上がってくるのだ。一言でいうなら「こりゃ凄い!」だ。
だが、いわゆるトンデモ映画や愛すべきバカ映画でもないのはことわっておく。実はドラマの部分はしっかりとしているからでもある。オープニングから侵略の状況にいたるまでの流れは、下手な映画がしがちな回想シーンや自分の心境をペラペラと喋る説明台詞がない代わりに、マークとトレントの親子が妻(母)を失った喪失感からくるわだかまりとそれでもなお強い絆がちょっとした台詞のやりとりと動作で示している。だから喪失感のマークが執拗にアイツとの「契約」にこだわりソレを守ろうとしたり、クライマックスの超展開を軟着陸でありながらもキッチリと観客の感情を導いているし、そしてアノ老人を出すことで、後半でマークが単なる行き当たりばったりでその地にやってきたのでなく「運命に導かれて」ここにきたのが暗に示されてもいる。-- ヒント:認識票と十字架。
要するに『若おかみは小学生!』と同様にドラマとしての段取りが見事に決まっているのである。だからこそのアノ燃え上がるクライマックスだ。
もちろん、それらはドラマの基本をしっかりと守っているからであり、新しさはない。しかし、昨今のシネコンで上映される状況や心境を台詞にして喋ったり、悲しいシーンでは悲しい音楽を入れたりして殊更にそれを強調する演出をする邦画が大部分なのだから、この映画がトンデモ・バカ映画なら今シネコンで上映している邦画はトンデモ・バカ映画以下だ。
そして、『征服』の続編の体をとってはいるが、これから観ても大丈夫。
もし、無理に弱点をひねり出せばレイティングがPG12なのでグロテスクなショットがバンバン出てくることぐらいしかない。だから誰彼におススメしかねるところか。
とまぁ、今回は褒めモード全開なので最後の締めはこの映画を観終わった自分の感情で終わります。
ヒヤッホォォォウ!最高だぜぇぇぇ!!
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