えいざつき ~元映画ブログだったポエマーの戯言~

批評というよりも、それで思い出した事を書きます。そして妄想が暴走してポエムになります。

『マイル22』をネタバレスレスレの感想

お題「最近見た映画」

 ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]

 

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www.imdb.com

 

ジェームズ・シルバ はCIAの極秘部隊に所属する小隊を率いる隊長だ。現在はCIA分析官のビショップ率いる情報チームによる合同部隊"オーバーウォッチ"の一員として活動している。現在の任務はダーティ・ボムとして使われる可能性がある放射性物質の回収を任務としていた。ある日東南アジアの国家インドカーのアメリカ大使館にリー・ノアーという元警官が現れ、その物質の所在を知っていると証言し始める。 彼の条件はアメリカへの亡命。信用したシルバはリーを飛行場まで護送するが、その道のりにはリーの出国を阻む武装勢力の攻撃が待っているのであった。

 

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ジョン・ル・カレ寒い国から帰ってきたスパイは映画化もされた名作であり、、これまでのジェームズ・ボンドで塗り固められていたスパイのイメージを脱却した作品でもあり諜報戦が、自由を守る名目で個人の自由を奪ってゆく矛盾を描いた作品であり謀略モノの原点でもある作品だ。その味わいは「スカッと爽やか!」ではなく、「薄っすらと露がかかってビター」になる。

 

同じ著者の映画裏切りのサーカスに例えると頭脳の代わりにひたすら銃撃!銃撃!銃撃!で描かれているのが『マイル22』だ。つまり、この映画は本質はアクションではなく、謀略戦モノの系譜になる。

 

謀略といえば諜報でスパイなのだが、込み入っているのは諜報機関の情報を基に軍隊が軍事行動を起こす流れではなく諜報と軍事の中間にある準軍事行動だというところだ。

 

 ちょっと調べてみたら、この映画での架空の部隊 "オーバーウォッチ" のモデルになっているのはCIAの特殊活動部(SAD)内の部署、特殊作戦グループ(SOG)らしく。そして、ここは自分の想像でしかないが、テイラー・シェリダン脚本ボーダーラインボーダーライン  ソルジャーズ・デイで暗躍していた部隊もおそらくはソレだ。

 

CIAが非合法活動をしていたのはカストロ暗殺(未遂)からありはした。ただ、決定的になったのは、やはり2001年9月のアメリカ同時多発テロ事件だ。敵の定義が、これまでの「国という土地をもった」存在ではなく、テロという「土地をもたないネットワーク」という存在が誕生したために、この掴みどころの無い敵に対応できるのはそうした部隊だからだ。

 

背景を書いたのはこの映画の見所である「薄っすらと露がかかってビター」のポイントが、この準軍事行動にあるからだ。謀略モノなので仮に明るい終わり方にしてしまうと2001年アフガニスタン紛争を題材にしたホース・ソルジャーみたいに英雄的な感動になってしまうし、完全に暗い -- バッドにはならないことは冒頭からすぐに分かるし、ラストあたりで台詞とちゃんと説明してある。-- 終わり方だとビターではなくなってしまう。だから、この展開は正しい。

 

その上にシルバ、アリス、ビショップ、ノアーを魅力的に描きながらも共感できにくいキャラ設定にして、英雄・感傷・浪漫をできる限り排除した70年代アクション風に寄せてきている。そうゆう意味で温故知新なアクション映画だが、80年代以降アクションが馴染んでいる人にはツライかもしれない。

 

見せ場は、くどいがやはり、銃撃戦、銃撃戦!銃撃戦 !! の終始で。今まで実話路線だったピーター・バーグ監督がふたたび、皆は批判的だが自分は大好きなバトルシップの方に戻ってきたのだから。自分としては大満足だ。

 

ただ、チョコッとだけ不満を漏らすとピーター・バーグ監督もイコ・ウワイス主演ザ・レイドのファンらしくて、そのリスペクトたっぷりの見せ場もあるのだけども、格闘シーンは、あまりにも細かくカットを割っているので、その辺りの面白みが足りないところだなぁ。

 


Mile 22 Final Trailer (2018) | Movieclips Trailers

 

 

Mile 22 (Original Motion Picture Soundtrack)

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ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕

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CIAの秘密戦争――変貌する巨大情報機関 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

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