ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
今日のポエム
シャオヘイかわええな。
映画とはポエムです!ポエムとは映画でもあります。それでは大いにポエムちゃいましょう!
そして今回のキーワードは
萌えましょう!
今回はネタバレスレスレの紹介モード。
本作は去年に本国語で一週間の限定で公開されて話題になったものを日本のアニプレックスが日本の声優の吹替をして配給した作品である。
原作はWEBアニメからはじまって、原作者MTJJが自ら監督となって本作の劇場映画の流れになってはいるが、時系列としては前日譚にあたる作品であるので、いわゆる一見さんお断りのファンムービーではない。
物語はかつて森に住んでいた小黒(シャオヘイ)が人間の開拓のため住みかを失い、都会に独りでいたところシャオヘイと同じ境遇のフーシー他四人の仲間と出会い、そして彼等を追ってきた人間ムゲンと関わったことでシャオヘイ自身の秘密と選択を迫られる流れになっている。
その本作の魅力は、もちろん主役の小黒が子供向きの可愛らしい魅力的なキャラクターであることが主な要因だろう。
また、それとは別に原作&監督のMTJJが持つ資質であろう独特なユーモアと、彼が幼い頃に観ていたのであろう日本のアニメ作品と中国神話の現代的な改変との三つの融合が、観る者に新鮮な感動を与えているからなのは間違いない。
独特なユーモアは実際に観てもらわなければ納得しにくいため今回は割愛して残りの二つについて語れば、日本のアニメ作品とは1990年代後半から2000年代であるのはすぐに分かる。例えばWEBアニメから切り出したのタイトルがどう見ても……
エヴァです!
以下のように、日本のアニメから多大な影響を受けているのが察せられる。
そして、本作では宮崎駿作品や大友克洋監督『AKIRA』(1988)、そして鳥山明原作『ドラゴンボール』などの影響が垣間見える。ただ、上記の三作品のアクションシーンはデッサン力が確かな三人なので「観客が何を見ていれば良いのか」の視点、つまりレイアウトがしっかりしているのに対して本作は少し混乱しているところが見受けられる。-- 注:『ドラゴンボール』に関しては鳥山が監督している訳ではないのだが、鳥山の特徴を作り手たちが再現していった末にそこに落ち着いたというべきかも。
次に三つ目の神話の改変だが、WEBアニメを観た人なら今更な話だが、本作だと後半にそれを象徴するナタというキャラクターが現れるからだ。(画像は公式Twitter)
このデザインと設定はもちろん中国神話を基にした幻想物語の『封神演義』に出てきた哪吒(ナタ)であり、マンガファンには藤崎竜の同名タイトルのマンガで、また古参のアニメファンには1979年の『ナーザの大暴れ』で名を憶えられているキャラクターだ。ナージャとして名を記憶されている人もいるかもしれない。中国では2019年にCG映画として甦り大ヒットした。それが本作では今風のポップなデザインで登場している。そしてココではお笑い枠のキャラクターだ。-- ちなみに『ナーザの大暴れ』に登場する敵役四人と本作の敵役の四人は設定が被っている。いわゆる四神、四凶の古典的な四のイメージだ。
また、本作では妖精と言ってはいるがシャオヘイやフーシーは日本でいうところの妖怪、または霊獣というべきだろう、-- もっともこれは自分が古代中国を扱った作品が多い諸星大二郎のマンガ作品に多大な影響を受けているからでもあるが。
そのことから本作は神と仙人と妖怪と人間が一緒に暮らしていた古代中国の神話世界をマンガやアニメに慣れ親しんだ中国の若者のために今風に作り直したのが本作だといえる。そしてそれが中国本国や日本で本作観ている人々に新鮮な感動を与えてもいる。
そんな視点からみると、登場人物のひとりであるムゲンは仙人をキャラクターにしたことが分かるはずだ、しかも本作一番の萌え枠だ。
仙人とは俗世とのかかわりを捨てて修行によって不老不死を体得した存在であり、その中でもムゲンは最高位の真人(しんじん)なのは間違いない。彼が「妖精と人間が共存する世界」を目指して活躍しているのは真人を真人たらしめていると言うべき概念、「すべての差別と対立を離れてその境地に生きる人をいう」である万物斉同(ばんぶつせいどう)を指す行為だからだ。-- おそらくはムゲンの名前はここからヒントを得ているのかもしれない。
しかし、俗世とのかかわりは捨てているので、いわゆる生活無能力者でもある。例えるなら、女性向けマンガでよくある設定、仕事はバリバリできるが私生活は洗濯も掃除もできずに散らかしぱなしで放置している年上女性キャラのイメージ。それが本作のムゲンだ。本作前半ではそんなムゲンの生活無能力者の魅力が炸裂している。
そんなムゲンと正反対のキャラクターであるシーフーがシャオヘイをめぐって争うさまは、まるで少女向け恋愛マンガでのヒロインを取り合う男子二人の構図にもなっているので、これもまた萌えるシチュエーションだ。
ここまでで、気が付いただろうが、中国神話の現代的な改変とは、彼らを愛らしい萌えキャラに変換したところだ。戦艦を萌えキャラにした『艦隊これくしょん(艦これ)』や国を萌えキャラにした『Axis powers ヘタリア(ヘタリア)』での方法を中国神話でやったのがこのシリーズの三つ目の特徴であり、オリジナリティでもある。神話という神聖なイメージをとっつきやすい愛らしく親しみやすく変えたといっても良い。
だから本作最高な楽しみ方はキャラに萌えよだ!
自分はムゲンに(*´▽`*)
劇場で鑑賞。
【本予告(90秒)】「羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)ぼくが選ぶ未来」 日本語吹替版 11月7日(土)全国公開(花澤香菜、宮野真守、櫻井孝宏ほか出演)