ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
アメリカを代表する作家スティーブン・キングの長編を映画化。ニューヨークに住む少年ジェイクは長い間謎の夢に悩まされていたが、その夢の断片が現実にあると知ってそこに向かうとそこから現実世界と繋がる形で存在する異世界へと導かれる。そこにあったのは夢で見た。ダークタワーをめぐるローランド(ガンスリンガー)とウォルター(魔導師)の闘いだっだ。やがてそれはジェイクの世界でも影響を及ぼしてゆく。
原作をⅠの途中で終わっている自分が言うのもおこがましいが『ダークタワー』の魅力は西部劇とファンタジーが融合、もっとハッキリいえば「銃と魔法」というの中二病、もとい、子供心をくすぐる設定であるはずなのだが、映画はイマイチ盛り上がらない。
理由は簡単でマシュー・マコノヒーが演じているウォルターに敵役としての魅力が無いからだ。この敵役、初登場するときはハッタリもケレン味もなくあっさりと登場するし、そして繰り出すそれも魔法というよりも奇術の様な描写なので面白味も無いし、決め技である人の心を読んでその隙間に入り込み支配する魔法の演出もあっさり目なので「こいつは強敵だ!」感がまったく無い。
かたやローランドには銃を撃つポーズやリロードにハッタリもケレン味もノリノリで演出している。本心を言えばこの映画の最大の見せ場はここだけなのだが、それも所詮は『マトリックス』からの応用に過ぎないので新鮮さは無く、大きな売りになっているのかというとそうでもない。
つまり、アクション映画としての面白さが感じられない。かと言って他に魅力を感じるかと思えないところも問題だ。
ジェイクとローランドの間に疑似的な親子関係が築かれるが、それはドラマとして深く描かれず、かと言ってクライマックスへの強い引きにもなっておらず、舞台設定もキングファンの心ををくすぐる程度で面白さも新鮮さも無いし、また大スペクタクルも無いのであれば、どうやって留飲を下げれば良いのかが分からないのが困る。
つまり「面白くもないけど、つまらなくもない」という感想になる。これだと同じ時期に公開している『ネイビーシールズ ナチスの金塊を奪還せよ!』や『ジオストーム』がいかに観客を楽しませようとしていようとする点で真摯なのが感じられて「(二作に対して)自分が悪かった」という変な感想がでてしまったのが、『ダークタワー』の正直な感想だ。