えいざつき ~映画ポエマーの戯言~

映画批評というよりも、それで思い出した事を書きます。そして妄想が暴走してポエムになります。

ネタバレスレスレ感想:『ファントム・スレッド』とはラブコメ映画のコメディ抜き

ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]

 

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1950年代の英国のファッション界のオートクチュールを担う一人のレイノルズ・ウッドコックは別荘へと道行でアルマという女性を見初める。それは彼のデザインするドレスに彼女が相応しいからで、恋ではなかった。アルマを気に入ったレイノルズは自分のハウスに住まわせるが、気難しいレイノルズの日常にアルマは翻弄されつつ自分らしさで対応しようとするが受け入れてはもらえない。だが、ある日を境に二人の関係は変化してゆく。

 

個人的な思い出話から入ると。 映画監督にはユーモアが撮れない人がいるらしいと知ったのは。スタンリー・キューブリック監督アイズ ワイド シャットを観たときだった。どうみても妻の一言から始まる夫の惑い、という喜劇にすれば観やすくなる内容をキューブリックは160分もまったくそれをしないで描いているのだ。それくらいドラマとしては「それだけ」なのだが、映像がしっかりとしていると退屈せずに観続けられるのが名匠たる腕の者なのだろう。

 

ファントム・スレッド』もユーモアが無いドラマだ。社会の上流に生きている者が町娘と出会って変わってゆくなんてマイ・フェア・レディプリティ・ウーマンを思い出すのは当然だろうし、そうゆう展開にもなるのだが、レイノルズの設定がどうみても亡くなった母に執着しているので落としどころは相当に変だ。

 

レイノルズとアルマは変だ。どう見てもこの二人は変すぎる!

 

レイノルズが母に執着しているのは初めの頃の台詞と中盤におこる「出来事」から察することができるし、何よりもレイノルズがドレスを仕立てるのも母の影響が大きい。大事なところはレイノルズにとって母は厳しいところも含めて重要な存在でもあるところだ。これも彼の台詞から察することができる。

 

対するアルマも結構変だ。ドレスに不釣り合いな女性からそれをはぎ取ることをレイノルズに提案するところから彼女もレイノルズと同じタイプの人間であるとこは分かるが、彼を自分に振り向かせたいがためにする、ある「出来事」が犯罪スレスレなので常識から逸脱している。

 

なのにレイノルズは自分に酷いことをした後に献身的に介護をするアルマに「母の姿」をみるのだ。もっと簡単にいえば、かつての母の姿がアルマに書き換えられた。 または原題 "Phantom Thread" に倣えば「母からアルマが主導権を奪った」といったほうが良いのかもしれない。そうでなければレイノルズが二回目にあう「出来事」を知った上での台詞の意味が通らない。さらに裏読みをすれば、最初の「出来事」もレイノルズは薄々とは気がついていたのかもしれない。そうでなければ医師の診療を拒絶するはずはないので、それも込みのあの台詞なのだろう。

 

まさに、変と変が出会って大団円!なんて落ちになっているのが、このドラマだ。

 

どうみても喜劇にした方が分かりやすいし観やすいのに、監督のポール・トーマス・アンダーソンはそれをしないで、映像に凝った愛の物語として仕立て上げた。同監督作品パンチドランク・ラブを覚えている自分としては「まぁ、そうなるよな」だ。

 

そして、愛で良く使われるロマンティックな部分も省いているので、ここに描かれている愛は、解析不能・意味不明のむき出しであるともいえる。 究極の愛は、本当の愛の姿なのだ。しかし、それをクールではなく「どやっ!」と締めるので、自分としては「おっ、おう……」思うしかない。一歩間違うとキザが鼻につく映画だが、ダニエル・デイ=ルイスとそれに負けじとビッキー・クリープスが素晴らしいので、映像美と楽曲とのセットで、けっこう娯楽としても楽しめるというのが簡単な感想だ。

 


ファントム・スレッド - 映画予告編

 

  

Ost: Phantom Thread

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