えいざつき ~映画ポエマーの戯言~

映画批評というよりも、それで思い出した事を書きます。そして妄想が暴走してポエムになります。

その感動は映画の外にある『勝手にしやがれ』話

ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]

 

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www.imdb.com

 

ミシェル・ポワカールは自動車を盗み追ってきた警察官を殺害してしまう。パリに逃げてきたミシェルはそこで米国人で駆け出しの記者パトリシア・フランキーニに出会いぞっこんになり、そして裏切られる。

ジャン=リュック・ゴダール監督

 

映画を何かと比較するとしたら音楽と比べるべきだと思う。映画の基本は「流れ」だからだ。ですから気まぐれにカットしたりすることは、まさにその原理を否定することになるんだ。

フレッド・ジンネマン

   エリック・シャーマン 編・著 渡部眞・木藤幸江 訳 ディレクティング・ザ・フィルム より

 

ジャン=リュック・ゴダールの作品につきまとうのは「カッコよさ」と「難解」だが、長編デビューの『勝手にしやがれ』は公開当時の状況を視野に入れればどうして難解にみえるのかが、解る映画でもある。

 

フランスヌーヴェルヴァーグとは「カメラ=万年筆」であり、「セットを廃してロケ撮影、同時録音、即興演出」の三つを主にした運動(ムーブメント)のことであり、その後の映画を変えた運動でもある。上記の「ロケ、同録、即興」が19世紀に絵画での「主線を廃していきなり絵具をのせて描く、室内ではなく戸外で描く」を主にした印象派と同じが20世紀で映画でも起こったのだと解釈はできる。すぐに思い浮かべるのはフランソワ・トリュフォー大人は判ってくれないアラン・レネ去年マリエンバートでだろう。

 

勝手にしやがれ』がこれらとひとつ抜きん出ているのは、この中でジャンプカットを多用したところだ。

 

ジャンプカットはシーンの連続性を無視してカットを繋ぎ合わせる手法で、誰もがすぐに思い出すのはスティーブン・ソダーバーグ作品だろうが、その有用性は映画で無駄が多くなり退屈になってゆくのを防ぎ心地よいテンポを確保するためだ。

 

そのジャンプカットを定着させたのが『勝手にしやがれ』なのだが、その経緯は面白のい。最初に出来上がったのは上映時間を大幅に超えるもので、-- 第一に完成台本なしで撮影している。-- これを半分にしなければいけない。そこでゴダールがやったのは各シーンごとにランダムに切り、それを繋げる。という誰もやっていないことをやった。

 

本来なら繋がらずにメチャクチャになるはず。なのにそうはならなかった。逆に斬新な表現として 評価されて現在まで至っている。これが『勝手にしやがれ』のジャンプカットだ。映画では初めてだった。

 

ここで素朴な疑問が浮かぶ「発表当時にどうしてそれがバカではなく斬新だと評価されたのか?」だ。

 

映画では始めてとは書いたが、別のジャンルではこれと似たようなモノ先行して存在していた。ジャズのビバップがそれだ。モダン・ジャズの起源ともいわれている。

 

ビバップとはコード進行に沿いながらも自由に即興演奏する音楽だ。即興が主なために、それ以前の念入りな打ち合わせに基づく(楽譜・編曲など)による全体の演奏。に対して奏者の力量でする演奏。それがビバップ

 

絵画では絵を筆や絵具で描くのではなく、すでにあるものを貼り合わせて、作品として表現するコラージュがすでに誕生してもいる。

 

要するに、すでにそれを受け入れる下地はできていた。そこに出てきたのが『勝手にしやがれ』なのだ。それらを映画でやったのが斬新として評価された。

 

ここから『勝手にしやがれ』が、というよりもゴダールが凄いのはビバップもコラージュも熟達したレベルが必要なのに対して彼は長編一作目でそれをやってのけたことだ。-- それはその後に、この映画の真似をしたが上手くいかなかった死屍累々の作品を覚えているからでもある。

 

それはゴダールが頭の中でいつも、いつも、いつも映画を撮っていた。という事実だ。そして『勝手にしやがれ』とは、彼が頭の中でのいくつかの作品から初めて外に出た映画なのだ。

 

ゴダール気狂いピエロ以降、政治に傾注して現代美術の「美と批判」の流れにのってその地位を盤石にしてゆくのだけれども、個人的にはそれに乗れない。簡単に言うと「感心はするけども感動はしない」系の世界の映画監督になる。

 

だけども、彼のファンのある種のうっとしさを感じつつも、その偉大さは理解しているつもりだ。

 

参考

Katte ni shiyagare (1960) - Trivia - IMDb

 


A Bout De Souffle - Trailer

 

 

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マッケンドリックが教える映画の本当の作り方

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ゴダール全評論・全発言〈1〉1950‐1967 (リュミエール叢書)

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