ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
DCコミックスのヒーロー『シャザム』を映画化。幼い頃に母親と離れ離れになり、孤児となったビリー・バットソンは母親を探すたびに里親と問題を起こしていた。今度の里親ホームには、彼以外に足が不自由なフレディ、抱き付き癖のあるダーラ、大学進学を控えたメアリー、ゲーマーのユージーン、無口なペドロという少年少女も住んでいた。母親を探す手掛かりが無くなり、途方に暮れるビリーにある日、いじめっ子に絡まれていたフレディを助けての逃亡中に謎の洞窟へと導かれて、老いた魔術師からスーパーヒーロー・シャザムの能力を与えられるのだった。
◆ はじめに感想
いきなり個人的な話だが、地方に住んでいると海外アニメでも子供向きのためか吹替版が多くかかる。字幕版が一日で1,2回しかないのもいつものことだ。
しかし『シャザム!』で、そんな事にあうとは思ってもみなかった。近場のシネコンの二つのうち1日合計10回で字幕が観れる回数が2回しかない。それを観ようにも、仕事と私事の二つでスケジュールの都合がつかなかった。
そうゆう訳で(?)吹替版で観たのだが。最初は特になんともなかったのだが、主役のシャザムが喋り始めると、もう、なんだか違和感がありすぎて、逆に……
頭がクールになる……
頭がクールになる……
頭がクールになる……
頭がクールになる……。
のが、ハッキリと分かって、思っていたほどにはノレなかったし楽しめなかった。けっしてつまらない訳ではないのだが、どうやら自分には合わなかったらしい……。
だから、冷静に観れたおかげ(?)で、この映画のドラマが表の楽しさとは裏腹に物凄くシリアスな内容をもっているのも直ぐに分かった。つまりドラマとしてなら『万引き家族』や『ぼくの名前はズッキーニ』と『シャザム!』は同じだ。
◆シャザムはどうしてバカ明るいか?
予告でもやっているのでネタバレにはならないと思うが、シャザムになったビリーはヒーローオタクのフレディと一緒になってガキらしい色々なバカをやる。今作で一番に楽しいし笑える場面だ。だが、よく見れば違和感を感じる。なぜなら普段のビリーは大人しくてバカやってはしゃぐタイプではないからだ。しかし、クライマックスのアレらで、ビリーに何が起こっているの(いたのか)かがハッキリと見えてくる。ビリーはあきらかに愛着障害に陥っている。
愛着障害とは幼少期に愛する人と接触できながったために心身の不調や対人関係で問題がおこる状態だ。
つまり、シャザムでバカをやっている時がビリーの本来の姿だ。
このメインにあるドラマは育児放棄で愛着障害の少年が、無理矢理スーパーヒーローになってしまったがために、嫌々ながらも他者とのコミュニケーションを取らなければいけなくなり、そうすることで障害を克服してゆくドラマなのだ。
◆そんな親なら捨てちゃえば
ビリーがどうやってそれを克服してゆくのかだが、ざっくりと云えば自身が求めていた母親を彼自身が捨てる。-- これは最初で台詞としてさり気なく出てくる -- ことで決着する。それを里親ホームの兄弟たちの "おっせっかい" な思いやりと、生みの母の心境が対比で描かれることでビリー自身にとって大事な存在とは何なのかを悟る方向にもってゆく。大切なのはひとつの何かを深く愛する愛情よりも、互いの何かを持ち寄って互いに分け与えることで構成される価値(家族観)が提示されているところだ。映画内で里親ホームを象徴する皆が手をひとつに合わせる “together” のポーズに象徴されているように「大きなモノがないのなら、各自がもっている小さな何かを誰かに分け与える」その力強さが描かれる。
だから、スーパーパワーを独り占めにしようと狙う敵役Dr.シヴァナとシャザムとの闘いがクライマックス -- 実はこの映画アクションシーンが凡庸 -- 急なアレで、アッと驚く展開がおこって、拍手喝采の爽快感(だと思う)になるのだ。そこにあるのは「大いなる力と責任」なのではなく、「必要なら分け与えてやる」こそが『シャザム!』が描くヒーローとしての存在意義であり定義なのだ。
◆最後に
とまぁ「これってファミリー向けに楽しく作っているけど、シリアスな『万引き家族』や『ぼくの名前はズッキーニ』と大して変わらないじゃないか」と超クールな状態で感じたのであった。
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字幕で観ればよかったなぁ(本音)……。
SHAZAM! | Official Teaser Trailer | DC Kids

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