ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
1978年に公開され、スラッシャー(スプラッター)の名作ホラー「ハロウィン」の40年後をへての続編。40年前にイリノイ州の小さな町ハドンフィールドで起きた猟奇殺人の犯人であるマイケル・マイヤーズ(ブギーマン)は現在は施設で厳重に監視されていた。彼を知り尽くしていたルーミス医師も今は亡く、マイケルの凶行からからくも逃げることができたローリー・ストロードも今や老境に入りながらも、自分の前にマイケルが再び表れると確信していたために、娘カレンには疎まれて、孫娘のアリソンだけが、ローリーを気遣っていただけだった。そんなある日にマイケルの研究が打ち切りになり、別の施設に移送されることになるが……。
スラッシャー(公開当時はスプラッター)ホラーの魅力は表向きは人の形をした化物が、どうやって現れるのか?どのように殺すのか?の二つが決まれば快楽が得られる娯楽であり、そのシンプルさゆえに使いつくされ、ついにはウェス・クレイヴン監督の『スクリーム』で頂点に達し、そして現在では使用停止中になっているジャンルだ。
そして『ハロウィン』といえばジョン・カーペンター監督の出世作でありスラッシャーホラーのジャンルを世界中に知らしめた映画だ。なのだが、自分にとってそのジャンルに興味を持ち始めたのは前述した『スクリーム』からなので、このジャンルは疎い。『ハロウィン』も昔一回観たきりで、それっきりだ。
それを承知のうえで書けば、カーペンター監督が了承してスタッフに入った今回の続編にスラッシャーとしての新鮮さがあるのか?といえばそうでもなく、だからといって必ずしも40年ぶりのノスタルジアを感じさせるファンのための映画とは言い切れない不思議な魅力も感じた。この感情はなにか?多分それは……
「は・あ・と・ふ・る」だ。
少し説明を加えると、これは和製英語の心温まる「ハートフル」意味でもなく、本来の英語の苦痛を与える意味の「heartful」でもない、その中間の感情であり、そして自分がでっち上げた、いわば自分英語だ。
まず、オープニングからソレだ。大きな大きなキティちゃんが振動すると、その他のキティちゃんも共鳴して呼応する。キティちゃん固有振動現象が起こっちゃうところから、「は・あ・と・ふ・る」だ。
ちなみに、この映画でも大きな大きなキティちゃんの振動に共鳴する小さなキティちゃんが出てはくるのだが、「ニワカはいらんぜよ」とばかりにつぶされます。
そして、マイケルとローリーの関係も「は・あ・と・ふ・る」だ。殺人者と被害者という関係なのは分かるし、マイケルがローリーを狙うのは理不尽な恐怖として理解はできる。しかし、ローリーが町から出ずに、むしろ迎え撃つ準備をしているのが意味不明だ。ホラーというよりもアメリカ文学を代表する名作『白鯨』のエイハブ船長とモビィ・ディックの関係を思わせるロマンスな匂いをも感じると、どうしてもこれはそうゆう感情になるしかない。
余談だが、ここでローリーを演じているジェイミー・リー・カーティスが、「最高にカッコイイ!」のもこの映画の魅力の要素になっている。過去にシュワルツェネッガーの『トゥルーライズ』やケヴィン・クラインの『ワンダとダイヤと優しい奴ら』に出演しているためか、自分にとってのジェイミーは触媒型女優の印象をもっている。触媒とは文字どおり化学用語の触媒と同じで、単体では大きな反応(魅力)を起こさず、何かと組み合わせる事で反応(魅力)を上げる物質(人)で、使い捨てカイロや酒には不可欠なモノだ。つまり、ジェイミーは前述したシュワルツェネッガーやクラインなどの強烈な「何か」と組み合わせになることで、本領発揮ができる女優なのだ。
その彼女がここでの「何か」との組み合わせで反応するのはマイケルことブギーマンと40年の月日なので、反応の大きさはジェミリー女優歴最高だし、魅力もMAXになるのは当然だとも云える。
本題に戻り、対決のメインのドラマと共にサブのドラマとしてついているのは、マイケルの件で、わだかまりがあった母と娘が和解して、その魂を孫が継承する終わりにもなっているところだ。まさに「は・あ・と・ふ・る」だ。
こうして原作者カーペンターがスタッフに入って正式な続編となった今作はスラッシャーとは別の新たなホラーの魅力(?)を開発したのであった。『ボストン ストロング 〜ダメな僕だから英雄になれた〜』の監督はどうやら、新しい殺人法を考えるよりも役者の魅力を引き出すことに長けた監督なのかもしれない。そして『ボストン』では寝落ちしてごめんなさい。
追記:今作の「は・あ・と・ふ・る」の結論に至ったのはinoさんの『CORPSING』を読んでひらめきを得たのでリンクを貼っておきます。ただし『ハロウィン』とはまったく関係ないし、そしてグロい。
もちろん、同じくinoさんの『ハロウィン』も。ちょいネタバレ(かも?)あり。そしてちょっとだけグロい。
Halloween - Official Trailer (HD)