えいざつき ~映画ポエマーの戯言~

批評というよりも、それで思い出した事を書きます。映画、SFが多めです。そして妄想が暴走してポエムになります。

我流恐怖映画論その1:人は何故、恐怖を愉しむのか?『劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明』より

お題「最近見た映画」

ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]

 

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www.imdb.com

 

つくしあきひとのコミックをテレビアニメ化した『メイドインアビス』の劇場版。世界に唯一残された秘境の大穴<アビス>。深く巨大なその縦穴には奇怪な生物たちが数多く生息し、今の人類には作ることのできない貴重な遺物の数々が眠っている。アビスの縁に築かれた街で暮らす孤児の少女リコは、記憶を失ったロボットの少年レグと出会いと偉大な探窟家だった母の白笛が発見されたことをきっかけに、アビスの奥深くへ潜ることを決意。様々な困難を乗り越えながら冒険を進めていく。旅の途中で出会ったナナチも仲間に加わり、さらに奥へと足を踏み入れた彼らは、そこの主であるボンドルドとプルシュカと名乗る少女と出会う。

小島正幸監督

 

注意:今回は内容にも触れることなく映画の核心への言及も避けてますが、純粋にこの映画を楽しみたい方には、ご遠慮くださるようお願いします。

 

◆はじめに

唐突だか、昨今の暗い世相により委縮しがちな感情を高めるために逆に自分なりの恐怖映画論をやってみようと思い立った。しかし、いざ始めるとまとまりが付きにくい状況になったので、一気にやるよりも、映画ごとに書いた方が通りがよいと思い。これから一作づづ作品を変えて三つの恐怖映画作品でフィクションおける恐怖について語ってみたいと思う。その第一段がこの『劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明』。

 

これはホラー映画なのか?と疑問に感じる人もいるだろうが、それに対する答えは「あなた御自身でお確かめて下さい」しかないのだが……

 

ちなみに日本ではレイティングはR15だが、海外ではおそらく上映は不可能だろう。

 

だが、このアニメ映画は恐怖映画について語る際に良い題材になると思ったからだ。

 

それが今回の主旨である「人はどうして、恐怖を愉しもうとするのか?」をも語ることになるからだ。

 

メイドインアビスとは

メイドインアビス』はWEBコミックガンマで現在も連載中の作品で、当然としてテレビアニメとして放送していた作品も完結せずに終わった作品だ。自分は原作は読まずにアニメ方を観ていた程度のライトかつニワカだが、それでも、その締め方もあまりよろしくないモノだったと感じていた気分で今回の劇場版(4DX)を観たのだけれども……

 

ああ、これはテレビでは放送できねぇ。

 

と、超納得な展開だった。

 

そして、大体のアニメ映画同様に、これも一見さんお断りのファンムービーなので、その魅力を今作だけで語るのは難しい。

 

そこで今回はアニメブログ風に主な設定とキャラクター紹介をして、まとめとしてこのアニメについての本質を書いてみる。それが今回の主旨にも繋がるからだ。

 

◆設定(Wikipediaより)

アビスとは直径約1000メートルで深さ不能の竪穴。人が住む世界とは違う生態系(人が住むには過酷過ぎる)を持っていて、そこには人の世界にはない高度な人工物である「遺物」が眠っており、それを発掘する人々を探窟家と呼んでいる。竪穴は八層の構造になっていて、人はそれを深界と呼び生態系も層ごとに異なっている。

 

そしてアビスには下底から上に上昇する際に「上昇負荷」通称「アビスの呪い」という人にしかかからない影響を受けて、それは各階層によって重症度が違ってくる。具体的には……

 

深界一層:深度0mから1350mの空間。上昇負荷は軽いめまいと吐き気。

 

深界二層:深度1350mから2600mの空間。上昇負荷は重い吐き気と頭痛、末端の痺れ。

 

深界三層:深度2600mから7000mの空間。上昇負荷は上記のふたつに加えて、平衡感覚に異常をきたし、幻覚や幻聴を見る。

 

深界四層:深度7000mから12000mの空間。上昇負荷は全身に走る激痛と、穴という穴からの流血。

 

深界五層:深度12000mから13000mの空間。上昇負荷は全感覚の喪失と、それに伴う意識混濁、自傷行為

 

深界六層:深度13000mから15500mの空間。上昇負荷は人間性の喪失もしくは死。詳細不明。

 

深界七層:深度15500m以深の空間。上昇負荷は確実な死。詳細不明。

 

深界極点(八層) :「奈落」とも呼ばれる深度20000m以深の空間。詳細不明。

 

つまり、次の深界へ行くほど人の世界へと帰還することは困難となり、最終的には元には戻れないので、この探検は帰り道がない一方通行であり、主人公たちはそれを承知で先へと進んでいるのだ。

 

◆キャラクター紹介(画像は公式HPとimdbから)

 

リコ

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地上の孤児院で育ったが伝説の探窟家の母の娘であり、自身も深界一層で探窟をして遺物を探す日々を送っていたが、母から伝言を受け取ったきっかけから奈落へと目指す。旅の途中でアビスの生き物の毒にやられて命と左腕を失いかけたが、一命をとりとめて左腕も失わずにすんだ。だが毒の影響で左腕の感覚を失い補助器具を付けている。このアニメの主人公でありキーパーソン。

 

レグ

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 深界でリコが見つけたロボットの少年。記憶を失っており、手から強力な熱線(火葬砲)を放ったり、自在に伸びる腕などの能力をもっているが、感性はいたって普通の男の子。リコの母と出会っていたらしい形跡があり、リコの奈落への旅につきあうことになる。今作では新たな能力をみせるが、一番の見所は放尿プレイ。

 

ナナチ

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見た目はリコやレグと同年代の子供であるが、ウサギのような耳をして全身が被毛に覆われた、いわゆる獣人のような外見。リコが命と左腕を失いかけたとき助けたきっかけで知り合いとなり、共に奈落への旅へと付き合うことになる。実は元は人で今作登場のボンドルドとは浅からぬ因縁がある。

 

プルシュカ

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ボンドルドとの血の繋がらない娘。今作でリコたちの仲間になる(絶対にウソは言ってない!)

 

ボンドルド

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深界五層から六層へと繋がる通路に居住を構えている人物で、通称「黎明卿」と呼ばれている。一見物腰の柔らかいが、その本質はナチュラルボーンキ◯◯イだ。

 

オーゼン 

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深界二層で暮らしている探窟家で、「不動卿」と呼ばれている。リコの母の師匠でかつての相棒でもあった。リコとレグに厳しいあたるが、意外と良い人。今作ではワンカットのみの登場。

 

以上のキャラが織り成すドラマと物語が、この『メイドインアビス』なのだ。

 

◆まとめ:闇に惹かれる者

やっと本旨を語ることができるのだが、実はこのアニメを観続けている者なら、自然と答えは分かるようにはなっているし、今作だと中盤あたりでリコとプルシュカが語り合った場面でリコはハッキリと見えてくる。深界極点である奈落へと向かう気持ちをリコは吐露している。「待っているのが母ではないと」思いつつも「お母さんに会いたいんじゃなくて、お母さんみたいなって一緒に冒険がしたい」という感情をだ。それでプルシュカがリコたちと一緒にさらなる深界へと旅だつ決意をさせた。(くどいようだが、絶対にウソなどいっていないぞ!)

 

テレビアニメでも今作でもリコは生死を危うくするような危険な目に遭っているにも関わらず、そのワクワクする感情は変わってはいないのだ。

 

ここでのリコの「それでも奈落に行ってみたい」というワクワクした感情は何かといえば、それは好奇心としか考えられない。

 

未知の何物かに出会ったとき人がする反応は恐怖で身が竦むか、その何物かがなんなのかをもっと知りたい感情のどちらかになるが、好奇心はあきらかに後者だ。そして、好奇心とは知的精神と創造性に繋がる感情でもある。

 

ここから強引にまとめると、人が恐怖を愉しむということは知的な行為であると、いうことであり、恐怖映画を観るという行為とは知的な活動と導くしかないのだ。

 

本来、フィクションの楽しみ方とは、そこから醸し出されてくる美的な感覚を楽しむ趣向になっているのだが、こと恐怖、またはそれに近いモノなどは知的な感覚を楽しむ趣向になっている。人々が金を出してまで恐怖映画を観るというのはそうゆうことなのだ。

 

だが、それだけだと、ただの冒険譚になってしまい恐怖映画としての奥行きがなさすぎる。だから、当然のごとく知的な精神の暗い部分も描く、-- 今作で例えるならリコが陽の側面ならボンドルドは闇の側面でもある -- その両者が並び立つことで恐怖映画が娯楽として成立する仕掛けになっているのだ。恐怖映画の登場人物に子供が登場するのはその相性がいいからでもある。子供とは好奇心の塊でもあるからだ。

 

以上をもって「人はどうして、恐怖を愉しむのか?」を終わる。

 

 


劇場版「メイドインアビス 深き魂の黎明」本予告

  

 

  

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  • 発売日: 2020/01/17
  • メディア: 大型本
 

 

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