えいざつき ~元映画ブログだったポエマーの戯言~

批評というよりも、それで思い出した事を書きます。そして妄想が暴走してポエムになります。

スウォーム

お題「ゆっくり見たい映画」

ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]

 

 

www.imdb.com

 

殺人蜂の大群(スウォーム)がブラジルからアメリカに襲来した。ミツバチたちは米軍のミサイル基地を壊滅させ、大都市に迫る。大統領の特命を受けた昆虫学者クレインは……。

Wikpediaより引用

 

今回はネタバレなしのオチャラケ紹介モード

 

6月12日はハリウッドの映画プロデューサー、アーウィン・アレンのお誕生日。

 

なら、本作を上げるのはこのタイミングでしかないわ。

 

でも、アレンの代表作なら『ポセイドン・アドベンチャー』(1972)とか『タワーリング・インフェルノ』(1974) だとかの大作を語るべきなのだろうが、  輸入版BDを持っているので本作をやるのだ。

 

その前に、アーウィン・アレンと言えば映画ファンなんならパニック映画のプロデューサーを連想するだろうが、彼は本来は『原子力潜水艦シービュー号』(1964 - 1968) 『宇宙家族ロビンソン』(1965-1968) 『タイムトンネル』(1966 - 1967) とかの数々のミニチュア特撮を駆使したSFTVを作ってきた者であって、どちらかといえばパニックとは無縁ではあった。

 

そんな彼に現れた転機は、1970年公開のパニック映画『大空港』だった。

 

 

ちなみに、本作の大ヒットで航空パニック映画であるエアポートシリーズ ‐‐ これを入れて四作 -- がはじまります。

 

ひとつの舞台で幾人の現&元スター俳優が繰り広げる群像劇の形式のひとつグランドホテルはアレンにとって天啓として響いたのだろう。「自分が得意とする特撮と組み合わせればこれはヒットする」ぞと。それで制作されたのが『ポセイドン…』であり、『タワーリング…』で、これが大ヒット。だから本作もその流れでヒットする……はずだった……しかし本作の興行は失敗した。

 

ハッキリいって面白くない!

 

観るのは時間の無駄。

 

輸入盤を持っているお前がどうかしている。

 

と、言っても良い。

 

簡単に本作の欠陥を言ってしまうとコンセプトとドラマが一致していないのよ。

 

コンセプトとは、パニック映画の様式。スター俳優を絶体絶命の状況に追い込んで、誰が死んで誰が生き残るのか?という見せ所なのだが、転覆して逃げ場所が無くなった豪華客船と紅蓮の炎が渦巻いて下へ行く事さえできない高層ビルなどの具体的恐怖にくらべて、殺人蜂とはいえ、あまりに恐怖がフワフワとしていて身に迫ってこない。

 

スウォーム

こんな感じだもん。

 

それプラス、ドラマのアメリカ本土にやって来た、この殺人蜂をどうやって倒すのか?のドラマが微妙にズレている。

 

ので、結果としてパニックにもスリラーにもならずに上滑りして、それが2時間以上続くという拷問。

 

でも、これって脚本を読んだ段階で気が付くはず。なのにこのていたらく。おそらくは脚本が完成しないで撮影をはじめたか、プロデューサー件監督のアレンが脚本を読めてなかった -- 脚本家にそうするように要求したのも同じこと -- と考えるしかないのだ。

 

大ヒット方程式だと思って強引に押し通したんだろうな。結果はコケたけど。

 

余談だが、プロデューサーとしてのアレンは監督としてのキャリアもあり、本作以前はSF作品を四本も撮っており『タワーリング・』ではアクション監督も担当しているので、本作もやれるのだろうと考えたのか?

 

さらに余談だが、本作はアーサー・ハーツォークの原作を映画化したモノだが、原作は読んでいないから原作どおりなのかは分からん。さらにハーツォーク先生の原作からふたつ映画化されていて、そのひとつが、日本でも1977年、スパックロマンという謎の売り込みで公開された『オルカ』(1977) だ。

 

 

こちらは、そこそこ楽しめる。

 

なので今回、日本ではめったに観る機会はないだろうけども、ひょっこりと本作に遭遇してしまった者に観る心構えとして自分が提唱するのは、このトンチキぶりを楽しめだ。

 

まずは、今や伝説となったあのシーン……

 

原子炉 (……らしい)

 

そこに殺人蜂襲来。

 

原子炉大爆破!

三つとも『スウォーム』より

ちなみに本作公開の翌年1979年にアメリカではスリーマイル島原発事故が起こっており、この描写はアッサリとチープになってしまったが、公開が一年ズレていたら、総スカン嵐の抗議だっただろう。

 

まぁ運が良かった……のかな?

 

しかしも、クライマックスは大都市ヒューストンが蜂の大大群に敗れて豪華の炎に陥るのだが、これがまぁ盛り上がらない。

 

スウォーム

おそらく、根本の原因はアーウィン・アレンはアクションは撮れても、ドラマの基本であるサスペンスが撮れないからだろう。何故ならこの後、「あの夢よもう一度」と考えたのか『ポセイドン・アドベンチャー』の続編『ポセイドン・アドベンチャー2』(1979) を撮ったが、出来上がりは良くなかったからだ。当然、興行も失敗している。

 

プロデューサーとしては敏腕でも監督としては大味。

 

今ならローランド・エメリッヒみたいなモノか!(いきおいにまかせた)

 

こうして、二度も監督作として失敗したアレンは次は監督を別の人を立ててた『世界崩壊の序曲』(1980) をプロデュースをしたが、その時はすでに『スター・ウォーズ』(1977) の大ヒット&ブームで映画界どころかあらゆるメディアでSFブームが巻き起こっていた頃。もう、かって一世を風靡したパニック映画の出る幕は無くなっていた。

 

なにせ、あの『大空港』から続いたエアポートシリーズも『エアポート’80』(1979) で興行は失敗して、シリーズは終了したのだから。

 

ので『世界崩壊…』も作品としても興行としても失敗。最新の特撮技術を使ったSF映画の大流行が、パニック映画の凋落と古い特撮技術しか使いこなせないアレンを映画製作から退かせることになる。

 

本作は、そのムーブメントの合間に誕生した仇花的な作品でもあるのだ。

 

BDで鑑賞。

 

 

 

 

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