えいざつき ~元映画ブログだったポエマーの戯言~

批評というよりも、それで思い出した事を書きます。そして妄想が暴走してポエムになります。

千と千尋の神隠し

お題「ゆっくり見たい映画」

ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]

 

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www.imdb.com

 

今日のポエム

それは二つの物語。

  

映画とはポエムです!ポエムとは映画でもあります。それでは大いにポエムちゃいましょう!

 

そして、今回は 

千と千尋の神隠し

そして、キーワードは。

 

大衆の記憶を揺り動かせ!

 

今回もネタバレスレスレ。だけど観ていない人なんていないよね?

 

今作『千と千尋の神隠し』は宮崎駿作品の中でも上位に入る人気作品であり、その宮崎監督の脳内ディテールの豊かさに圧倒される作品でもある。

 

そして、そのディテールの豊かさから、様々な謎解きや考察がなされているし、内容自体もその突拍子も無い展開からタレントの松本人志などが、「なんで、こんな意味がわからんヤツに皆んな感動できるの?」みたいな疑問が言われている。

 


松本人志 千と千尋の神隠しについて語る

 

しかし、この豊富さからくる考察や疑問が溢れるこの作品を観客が意味不明だと思わずにすんなりと娯楽作品として認めているのは、誰もが慣れ親しんだある二つの物語のプロットとほぼ同じモノを使っているからなのだ。

 

ここで言うプロットとは「物語の骨子」であり、「物語の展開の仕方」であり、映画用語で言う「転がし」だ。どんなディテール豊かでも、変わったキャラクターが出ていても、それをすべて削いてしまえば、最終的に残るものでもある。

 

それでは、『千と千尋』が何のプロットに似ているかといえば、一つ目はグリム童話の『ヘンゼルとグレーテル』であり、二つ目は松谷みよ子著『龍の子太郎』だ。

 

ヘンゼルとグレーテル』の物語は貧しい一家が母の提案で、二人の子供兄のヘンゼルと妹のグレーテルを森の奥深くに棄てられるのだが、そこでお菓子の家に住む人食いの魔女に食べられてしまう目的で、兄ヘンゼルを人質にとして取られた妹グレーテルが兄を救い人食い魔女と戦って勝ち、母が死んで二人を棄てたことを後悔している父のいる家へ帰る物語であり、『龍の子太郎』は父母がいないで育った太郎には実は龍となった母がいて、その母に会うために住んでいる沼を目指しながら、生きる知恵を貰ってゆく物語なのだが、『千と千尋』はこの二つのプロットが錯綜している。

 

つまり『千と千尋』はこの二作品のクロスオーバーなのだ。

 

もちろん、「ほぼ」なので、若干のズレと違いはある。しかし、この二つのプロットを通せば、「千尋の母親はどうして千尋に冷たいのか?」(『ヘンゼルとグレーテル』のプロット)が分かるし、「どうして豚なのか?」(『ヘンゼルとグレーテル』のプロット)も分かるし、成長する千尋の姿も(『龍の子太郎』のプロットで)分かるし、そして『千と千尋』最大の謎である、「千尋にとって見知らぬ少年ハクはどうして助けてくれるのか?」が解けるのだ。(画像はimd)

 

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千と千尋の神隠し

つまり、ハクは千尋の兄ということになるのだ。

 

それは千尋が物心をつく前に、川でおぼれた時に助けてもらった誰かが千尋の兄だった。という事実であって。どうして千尋の母が千尋に対しては冷たく当たるのかが見えてくる。つまり、千尋のために兄(ハク)は死んだからになるからだ。幼い千尋はそれを憶えていないだけになる。そして『龍の子太郎』のプロットからみればハクがどうして龍の形をしているのか?そしてどうして千尋を助けるのかが『ヘンゼルとグレーテル』のプロットですんなりと理解できるようになる。

 

実はこの辺りの考察は、評論家の岡田斗司夫もやっている。(動画54分頃)

 


リクエストに応えて『千と千尋』解説の後編を公開します【UG動画】#307 / OTAKING explains about "Spirited Away"

 

しかし、今回の主旨は「どうして観客は、この意味不明な物語を娯楽として認めているのか?」なのだが、岡田の考察ではそこまではいっていない。つまりは点でしかないのだが、それを線として繋げるには『ヘンゼルとグレーテル』と『龍の子太郎』のプロットを使えば、この考察が溢れる意味不明な物語をすんなりと受け入れる事ができる。仮に二作品を知らなくても、そこから派生したバリエーションのどれかには当たったことは必ずあるからだ。

 

つまり観客は知らず知らずのうちにそれらに当てはめて『千と千尋』を観ていることになる。

 

これが今作が娯楽としてのファンタジー、というよりも現代の童話として認められた理由なのだ。

 

ちなみに今回はプロットだけに着目して書いたので、今作の意図とメッセージについては自分も巷の評価と同じなので省略させていただきました。

 

最後に余談として、ラストシーン一歩手前で、千尋が最後に受ける試練、「どうして、あの豚に両親がいないと分かったのか?」問題をちょっとだけ解説すると、実は宮崎駿はその訳をちゃんとシーンとして描いている。それは千尋がこっそりと豚になった両親に会いに行くシーンで豚小屋に千尋が入った瞬間に豚たちが一斉に、千尋に向かって「食べ物くれ!ブヒ、ブヒ!!」と嘶いていたのに、最後の試練では、その豚の嘶きがなかっからだ。

 

つまり、両親がいないのを見抜いたのではなくて、目の前にいるそいつらは豚ではないと見抜いたのだ。

 

同じ宮崎作品『もののけ姫』で言っていた「曇りなき眼」というやつだ。

 

劇場で鑑賞

 


Spirited Away - Official Trailer

  

 

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