ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
今日のポエム
ソウル トゥ ソウル
映画とはポエムです!ポエムとは映画でもあります。それでは大いにポエムちゃいましょう!
そして、キーワードは。
全てのエヴァファンにケンカを売る!
今回はネタバレスレスレの激闘誉めモード。
注意: 今回は本作を観るか観ないかで迷っている一般の方に向けて書いております。なので、直接的なネタバレを避けるように心がけていますが、最初から観るつもりで純粋にこの作品を楽しみたい方は読まないことをお勧めします。また、あえて今回エヴァファンに対して不快な文言が記されていることをお許し下さい。
本作は1995年から1996年にかけて放送された『新世紀エヴァンゲリオン』(以降、TV版と呼称)と1997年に劇場公開された『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』『THE END OF EVANGELION 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』(以降、旧劇と呼称)を基に再構成された『エヴァンゲリヲン新劇場版:序』(2007)『エヴァンゲリヲン新劇場版:破』(2009)『エヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(2012)(以降、新劇と呼称)に続く作品であり、完結編(以降、シンエヴァと呼称)でもある。
そしてこの、エヴァンゲリオンという物語は壮大な設定ゆえにサブカルとオタクの間に論議を巻き起こし、かつ、TV版と旧劇での衝撃的な幕引きで、両者の感情を宙ぶらりんにした事で今でも伝説となっている。そして今回の『新劇』&『シンエヴァ』は、それに対しての回答&完結といった趣きになっている。
またそして、論議を巻き起こした。と先に書いたが、そのせいで、一般的には難解な作品として捉えられているし、公開当時も、その解釈で様々な書籍などが出版されたりもしていた。
なので、「本作を理解するには『TV版』と『旧劇』は観ておかない」とか、「最低でも『新劇』は観ておかないと理解できないんじゃないか?」とエヴァファン以外に思われている雰囲気があるが、それは心配無用。
いきなり本作から観ても大丈夫だ!
単体でも本作は今年のベスト級の作品だ!
一部のエヴァマウントに振り回されてはいけない!
大体、理解できなければ感動できないのでは無いのか?の考えが間違っている!
感動とは作り手の魂の共鳴を我々が受け取ることだ!
そこに理解などとはチャンチャラおかしい!
大体、理解や考察などというものは所詮、自分がこの作品をどう読み解いているのかを語っているに過ぎない!
魂どおしの共鳴があれば、そこに理解なぞ要らない!
作り手の魂に共鳴した己自身の魂を信じろ!
チョット感嘆符を使いすぎた!
それは、さておき。本作の総監督である庵野秀明が、それまでそれを他者に伝える語り方を持っていなかった事も、また確かだ。
所詮、エヴァとは庵野自身の心境を語っている私小説なのだ。というのが自分の見立てだし、そう見ている他の人は多くいる。
だから、『TV版』&『旧劇』での庵野秀明の内面に潜むグロテスクな奇想に酔いしれ共感する者もいれば、それに反発する者もいることも、また分かる。
ましてや、そんなグロテスクな奇想を魅せつけて「大人になれ」とは、「あんたが一番大人じゃないじゃん!」と返されるのがオチだ。
つまりは、庵野秀明は画で己を表現する方法は知っていても、それを他者に伝える方法を持っていなかった訳だ。
なぜなら、表現された何かが何の意味をもつかは、受け取る側の他者のセンスと教養に関わるからだ。『TV版』&『旧劇』でそれを失敗と自覚して、それを多数に感じさせるためには、それが何なのかを知る必要があり、改善する必要があった。
つまりはセンス&教養の無い他者にそれを感じさせるのは他者に心地よい気分にさせて、自身の主張を入れてゆくしかない。その手法を模索するしかない。
その長い暗中模索期間に出会ったのが『シン・ゴジラ』(2016)で使われたプレビズだ。プレビズとは、雑にいえば動く絵コンテで、簡易なCGでシーンの画と編集のタイミングを撮影に入る前に決めておく映像機材だ。
それで、庵野秀明は自身にあるオタクな記憶と自身が心地よいと感じている岡本喜八作品のテンポを取り入れて出来上がったのが『シン・ゴジラ』だ。この作品はエヴァ以外ではじめて大ヒットした。つまり他者が心地よい(面白い!)と感じてくれた。
かくして庵野秀明は他者に伝える方法を見つけた!
そして本作で自身の頭の中にしかない、グロテスクな奇想の画と『シン・ゴジラ』で見つけた心地よいテンポの融合で生まれた、誰にも模倣できない唯一無二の作品が誕生した。
それはまるで、F・フェリーニの奇想と岡本喜八のシーン繋ぎのセンスが融合したかのように。(画像は予告より)
それだけでも本作は観るべき価値のある作品だが、それプラス、ファンなら誰でも感じているであろう庵野秀明自身の人としての成熟だ。それは会社の取締役社長になり、結婚もした人物の辿り着いた胸中そのものだ。(画像は予告より)
「大人になれ!」と叫ぶのでなく「大人とはこうゆうものなんだよ」と他者に寄り添い諭している。それが『TV版』&『旧劇』と本作との違いだ。
つまり本作は庵野秀明の人としての成熟と映像作家としての成熟も融合した作品なのだ。
だからこそ、本作は是非劇場で観ておくべきなのだ。
以上、ここで終わります。
余談:自分にとって『エヴァンゲリオン』とは何だったのかを別ブログに書いてありますので、一応貼っときます。
劇場で鑑賞。