えいざつき ~映画ポエマーの戯言~

映画批評というよりも、それで思い出した事を書きます。そして妄想が暴走してポエムになります。

映画暇話:『光の王』から『アルゴ』へ

お題「ゆっくり見たい映画」

ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]

 

 

www.imdb.com

 

1979年11月4日、テヘランイラン革命が激しさを募らせ、その果てにアメリカ大使館を過激派グループが占拠し、52人もの人質を取るという事件が起きる。パニックの中、アメリカ人6名が大使館から逃げ出してカナダ大使の自宅に潜伏。救出作戦のエキスパートとして名をはせるCIAエージェントのトニー・メンデス(ベン・アフレック)は、6名が過激派たちに発見され、殺害されるのも時間の問題だと判断。彼らを混乱するテヘランから救出する作戦を立案する。しかし、それは前代未聞で大胆不敵、そして無数の危険が伴うものだった……。

シネマトゥデイより引用

 

今回はネタバレスレスレの解説モード

 

この数日間……

 

書くモチベーションが無い。

 

いや、劇場で新作は観ているし、自宅で旧作も観ているのだが、書く気力がまるっきりナッシング。

 

なので、今回は大昔にちょっとだけ書いて、そのまま塩漬けにしていた作品を、ちょっと手直しをして載せちゃう。

 

さて、本作は映画俳優ベン・アフレックの監督作であり、その年のゴールデングローブ賞ドラマ部門作品賞・監督賞。ならびにアカデミー賞編集賞・脚色賞・作品賞を受賞した輝かしいを持っているのだが、公開当時はそのユニークさで話題になった作品でもある。

 

政治的な背景は抜きにして、監督としてのベン・アフレックは、手堅い。面白い画とか、独自のスタイルは無いが、バックさえしっかりとしていればシナリオをキチンと読み取ってシッカリと撮る事ができる手腕はある。特に序盤の群衆などは良い塩梅になっていた。

 

1978年1月に勃発したイラン革命からはじまり、それでアメリカに亡命した前国王パーレヴィ2世をイランへと引き渡すため若者を中心とした群衆が1979年11月にアメリカ大使館を占拠、大使館員等を人質にして交渉しようとした、いわゆるイラン・アメリカ大使館人質事件からのひとつのエピソードを映画化したのだが、その救出方法が取り残された大使館員6人をSF映画のスタッフとして偽装させる。というユニークすぎる実話だったからだ。

 

その背景には当時世界中の話題の的になっていた、あの『スターウォーズ』(1977) があった。そのロケ地のひとつが政情が不安定なチェニジアで行われたからだ。-- 撮影時は安定している。

 

だから欧米にはない雰囲気がある異世界の感覚を得たいがために、ロケ地として選ぶ。という言葉にはそれなりにリアリティがあるものだった。

 

そこで、選ばれたのが『アルゴ』なのだ。しかし作中では、数あるシナリオからこのSF作品が選ばれた展開になっているが、実情は少し違っている。

 

アルゴ

実は『アルゴ』には原作がある。それはアメリカのSF作家ロジャー・ゼラズニィの『光の王』だ。1967年に発表されたその内容は宇宙を舞台にしたモノなのだが、そこにヒンズー教や仏教の概念を取り入れたそれまでのアメリカSFには無い魅力を放っていた。

 

-- ちなみに余談として、ロジャー・ゼラズニィの作品の中で『地獄のハイウェイ』というのがあって、これは『マッドマックス2』にも影響を与えたと言われている著作だが、それを映画化した『世界が燃えつきる日』(1977) という作品がある。

 

世界が燃えつきる日 (画像はIMDbより)

そんな、今までのSFの世界観に東洋の宗教・文化を織り込んだ『光の王』が描く物質主義中心よりも精神主義中心への傾倒は映像化されれば当時のヒッピー文化も巻き込んで受ける可能性はあった。なにせビートルズジョン・レノンがインドにのめり込んでいた時期でもある。

 

余談2として、あのホドロフスキーの『DUNE』もその系統なのはあきらかだ。ホドロフスキーが集めたクリエイター達オバノン、コップ、フォス、メビウス、ギーガーなどのクリエイターを「魂の戦士」と呼んでいたのだから。

 

物質主義よりも精神主義。『光の王』も『DUNE』もソコに共通点があったが、もちろん、それは具現化せずに、スターウォーズにおけるフォースとなって現れたのは映画ファンなら誰でも知っている。

 

さて、1970年に熱心なSF&コミックファンの男バリー・I・ゲラーが『光の王』の脚本を書き映画化に着手。そのプロジェクトにコミック作家ジャック・カービー、SF作家レイ・ブラッドベリ、特殊メイクアップアーティストジョン・チェンバース、建築家パオロ・ソエリ、デザイナーで建築家で発明家バックミンスター・ミラー等を集めて、その具体的なイメージを練った。この辺りは『ホドロフスキーのDUNE』と同じである。

 

だけども、ゲラーの構想はこれだけでは無かった。映画化と共に『光の王』のアメリカのディズニーに匹敵するテーマパークをも建設しようとした。弁舌巧みなゲラーは出資者を集めコロラド州オーロラ市に約80万平方メートルの土地と5億ドルの資金の目処が立った。

 

問題が起こった。ゲラーは単なる熱心なファンだけであって、テーマパーク建設どころか映画すらも作ったことが無い素人だった事だ。それなのにキャリアを持っているフリをして売り込んだ。事実上の詐欺である。しかもテーマパークの売り込みの際に不透明な取引が行われた疑いでパークのプロモーターと市長を含むオーロラ市政委員の半分が起訴された。『光の王』は頓挫したのだ。

 

その約一週間後、CIAの工作員メンデスが人質救出のためイランへと飛び立った。

 

メンデスは救出作戦の際にリアルなカバーストーリーを欲した。それに『光の王』はうってつけだったのだ。

 

そのメンデスに『光の王』を薦めたのは特殊メイクアップのチェンバースらしい。彼はゲラーが映画化の企画を上げていた頃から関わっていたからだ。それが頓挫したのだから『光の王』がリアルなカバーストーリーに最適なのは容易に想像できる。

 

かくして、『光の王』は『アルゴ』となった。

 

 

これが、映画では描かれなかった顛末だ。

 

今回の記事と一部の画像はここから参照

boingboing.net

 

 

 

 

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