えいざつき ~元映画ブログだったポエマーの戯言~

批評というよりも、それで思い出した事を書きます。そして妄想が暴走してポエムになります。

映画の引用『太陽を盗んだ男』

ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]

ストーリー

自ら製造した原子爆弾で政府を脅迫する男の孤独な闘いを鋭い風刺とパワフルな演出で描き、現在もカルト的人気を誇る異色のアクション映画。中学校の冴えない理科教師・城戸は、原子力発電所に侵入してプルトニウムを盗み出し、自宅アパートで苦労の末に原子爆弾の製造に成功。警察に脅迫電話を掛けると、以前バスジャック事件に遭遇した際に知り合った山下警部を交渉相手に指名する。明確な目的も思想も持たない城戸は、テレビの野球中継を試合終了まで放送させるよう要求したり、ラジオ番組を通して次の要求を募集したりと、行き当たりばったりの犯行を続けるが……。

スタッフ

監督 長谷川和彦
原案 レナード・シュレイダー
脚本 レナード・シュレイダー 長谷川和彦
製作 山本又一朗
プロデューサー 伊地智啓
撮影監督 鈴木達夫
照明 熊谷秀夫
録音 紅谷愃一
美術 横尾嘉良
編集 鈴木晄
音楽 井上堯之
編曲 星勝

1979年製作/147分/日本

映画.comより引用

 

今回はネタバレ無しのの解説紹介モード

 

思い出話からはじめる。

 

太陽を盗んだ男』といえば、たった2本しか撮っていないのに、それ故に長谷川和彦という名を残す監督となった人物が撮った日本映画の名作でありカルト作品でもある。そして、その評価は自分が若い頃には完全に固まっていてもいた。

 

しかし、当時はビデオも出ていなかったので名画座でかかっていたのを遠出してまで観にいった、あの時の自分の第一印象は混乱気味だったのを憶えている。

 

実は、あらすじから本作をポリティカル・スリラーとかポリティカル・アクション作品だと予想していたのに、まあー、これが微妙に変。沢田研二演じる主人公が皇居前にバスジャックされた事件に巻き込まれたのをきっかけに原爆を作ったが、原材料のプルトニウム原発から盗みだす時にピコーンピコーンと当時流行していたインベーダーゲームの音を出してマンガチックに描写して原爆を作ったのにその要求が、野球放送の延長とか、ロックバンドのローリング・ストーンズの武道館公演とか、政治的な要求はなくて後半になって原爆作った借金でようやく国に現金を要求するという、スリラーというよりもコメディ。

 

ちなみにGoogleさんもコノ作品はコメディとして分類されている(^^ゞ💦

 

画像

 

でも、これで軽い感じだと思われると面倒なので、一言添えておくと川島雄三の『幕末太陽傳』(1957)とか今村昌平の『豚と軍艦』(1961) と同じ、あるいはモリエールぽい風刺喜劇のテイスト。

 

でも、正直に言って何を風刺しているのかは分からない。おそらくは当時の社会的雰囲気に対するモノだろうが、これも後半にチョイと触れる。

 

でも、その前に引用だ。コノ作品はコメディじゃないかと邪推したが、実はコメディ映画からアイデアをもらっている箇所がある。1963年の『おかしなおかしなおかしな世界』からだ。

 

『おかしな…』は強盗犯が死に際に漏らした35万を巡って繰り広げられる五人の男と警部のスクラップコメディだが、そこでその五人の男と警部が高い建物から落ちるカットで電柱に架けられた電線にトランポリンのようにビョーンとショックが軽減されて下へと落ちるのがあるが、『太陽を…』にも似たのが登場するのだ。

 

太陽を盗んだ男

おかしなおかしなおかしな世界

なっ!

 

さらにはその前に、『太陽を…』で街中に札束が舞い散るシーンがあるが、『おかしな…』にも似たようなカットがある。

 

おかしなおかしなおかしな世界

太陽を盗んだ男

このあたりはどう見たってオマージュとは考えられないので、おそらく『おかしな…』から拝借したのではないかと勘ぐっている。

 

そこは、伝えたいところではないからだろう。

 

さて、ここから後半に入るが、長谷川監督がコノ作品でやりたかったのは『バニシング・ポイント』(1971)みたいな奴だったんだろかと。

 

ポスター画像

 

バニシング・ポイント』は今は車を運転して運ぶ陸送の仕事をしているが、かつてはドライバーであり警官でもありベトナム戦争にも従軍していた男コワルスキーがスピード違反でパトカーを振り切ったことをキッカケにその行為が地方局取り上げられたことで英雄視されてしまい彼を捕まえようとする警官達とのせめぎ合いを描いているアメリカン・ニューシネマの代表的作品であり、伝説的な作品でもある。

 

-- アメリカン・ニューシネマ(ニュー・ハリウッドまたはハリウッド・ルネサンス)とは1970年後半から1970年後半に米映画界で起こった、若者を主軸としたアンチヒーロー、アンチハッピーエンドの反体制色が濃い作品群で『俺たちに明日はない』(1967)や『イージー・ライダー』(1969)や『タクシー・ドライバー』(1976)もそこに属する。当初は作品は当然として興行としても成功していたので盛んに作られていたが、『ロッキー』『ジョーズ』、そしてとどめの『スター・ウォーズ』の登場で興行としての魅力は無くなり衰退していった作品群。

 

まぁ、ぶっちゃけ。『バニシング…』での抑圧者としての警官、助手としてのDJ、そしてカーチェイスを日本でもやりたかった。としか見えない。

 

太陽を盗んだ男

バニシング・ポイント

太陽を盗んだ男

バニシング・ポイント

当時、もちろん日本にも反体制でアンチヒーローな作品もあったが、やはりお国柄なのか感情湿度が高くてジメっとしているので、そんな雰囲気を打破するカラっとした作品づくりを目指したとしか考えられない。

 

そうしたら結果、魔改造な作品に。

 

でも、それはとても魅力的な魔改造だった。

 

としか……。

 

こうして『バニシング…』が伝説的作品となったように、コノ作品も伝説となった。

 

DVD&VODで鑑賞。

 

 

バニシング・ポイント [Blu-ray]

 

 

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