えいざつき ~元映画ブログだったポエマーの戯言~

批評というよりも、それで思い出した事を書きます。そして妄想が暴走してポエムになります。

映画の引用『007/ユア・アイズ・オンリー』

ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]

ストーリー

ギリシャ・コルフ島沖イオニア海で、英国電子情報収集船が事故で沈没し、船に積まれていたATAC(超低周発信機)を引き上げる作業を、イギリス海軍情報部は、海軍退役将校で海洋考古学者であるティモシー・ハブロック卿に依頼した。ATACは、原子力潜水艦からのミサイル攻撃を目的地に誘導するトップ・シークレットで、東側に渡れば、軍事バランスが逆転するのは明らかだ。しかし、ハブロックの一人娘で、潜水のベテラン、メリナ(キャロル・ブーケ)が、両親に協力しようと訪れた時、水上機でやってきた何者かによってハブロック夫妻が銃撃された。惨殺された両親の復讐を決意するメリナ。やがて、この事件解決を命じられたジェームズ・ボンドロジャー・ムーア)が、犯人とみられるパイロット、ゴンザレス(ステファン・カリファ)を調査するためマドリッドヘ飛んだ。

スタッフ

監督:ジョン・グレン
脚色:リチャード・メイボーム マイケル・G・ウィルソン
原作:イアン・フレミング
製作総指揮:マイケル・G・ウィルソン
製作:アルバート・R・ブロッコリ
撮影:アラン・ヒューム
美術:ジョン・フェナー
音楽:ビル・コンティ
編集:ジョン・グローバー
衣装デザイン:エリザベス・ウォラー
特殊効果:デレク・メディングス

1981年製作/イギリス・アメリカ合作
原題:For Your Eyes Only

映画.comより引用

 

ネタバレなしの懐かし解説モード。

 

ポスター画像

 

今回はジョン・グレンという映画監督について書いてみたい。

 

画像はimdbより


とはいっても、007を手掛けた監督さんはそれ以外の他の作品でも評価を残しているが、このジョン・グレンという人物のキャリアは007シリーズでしか残されてはいない。

 

ぶっちゃけ、映画で「コロンブス」と言えば、すぐに思い浮かべるのがリドニー・スコットであってグレン監督作を思い浮かべるのはほぼ皆無。そう断言できる。

 

ポスター画像

 

いや、この人も撮っているんです「コロンブス」を。

 

でも、誰も知らない。

 

そうゆう意味では、ジョン・グレンとは007シリーズのためだけに働いてきた者であり、まさしく座付き監督と呼ぶにふさわしいポジションにある。

 

そんな彼の監督第一作目がコノ作品。公開当時はついに宇宙まで行った『007/ムーンレイカー』の次もあってかボンドのイメージからかけ離れた明朗ヒーロー路線から一転してハードな作品として評価はされたが、でもやっぱりムーアボンドのイメージからはズレていたために現在ではシリーズ内でも評価は低い。

 

しかしながら、コノ作品こそがグレン監督の007に対する最高のリスペクトなのだ。

 

だが、その前に。007シリーズの概要を語ると、それはジェームズ・ボンドという美女と秘密兵器と巨大な陰謀に絡む紳士、というよりもソコから少し逸脱している男が世界を股に掛ける展開になっている。今風に言うなら「チョイ悪オヤジ」が活躍するキャラクターで、それが当時の男性の理想像のひとつとなった。

 

なので、このシリーズは物語はあるけどもソコにドラマはない。ボンドのキャラに、その時の時節に寄り添ったコンセプトのみで作られ続けた。

 

とはいえ、そこは長いシリーズなので異色作も出現する。よく知られているのはシリーズ6作目『女王陛下の007』(1969)がソレになる。ココではコンセプトだけだったシリーズにはじめてドラマをやったのだ。

 

女を任務遂行のための道具として適当にあしらっていたボンド能動的な女性に初めて恋に落ちて、そして宿敵プロフェルドに殺されてしまうという破局を迎えるドラマをやったのだ。

 

女王陛下の007

当時としては、その前のS・コネリーが演じていたボンドとは違う新機軸を打ち出そうとしたのだろうが、これが総スカン。『女王陛下』のボンド役も監督も以降シリーズから外された

 

とはいえ、現在では『女王陛下…』は評価が高い。それどころか、D・グレイグが演じたボンドはそのアイデアを再生産して使っている。

 

余談だが、『ノー・タイム・トゥ・ダイ』に対する自分の評価は低い。ドラマを通すあまりに物語が破綻しているし、もっとキツメに言えば、ドラマではなくボンドという役の解体を見せられたと感じているからだ。

 

さて、そんな『女王陛下…』だが、グレンはそこで編集とセカンド監督にクレジットされている。つまり監督としてのキャリアのはじまりはここからなのだ。だからだろう思い入れは深い。

 

女王陛下の007

コノ作品からはグレンの『女王陛下…』に対するリスペクトが端々に強く感じられるのだ。

 

まずは、オープニングから『女王陛下…』で殺された恋人の墓参りから入ってからのプロフェルドらしき −− 作中にズバリの説明はなし −− 人物に殺されかけるが何とかソノ危機を切り抜ける。

 

コノ作品の二人のボンドガールも今までとは趣向が違う。一人は両親を敵役に殺されて復讐を誓うし、もう一人はまだあどけなさが残る少女でそれがボンドにセックスを迫りたじろかせるのだ。積極的でありボンドガールにしては能動的。

 

007/ユア・アイズ・オンリー(1981)

ボンドに協力する組織・人物も『女王陛下…』ではユニオン・コルスというマフィアのボスが味方になった。コノ作品でも地元のマフィアとそのボスがボンドに助力するので『女王陛下…』の設定を思い出させる。

 

007/ユアアイズオンリー

極めつけは、コノ作品の中盤で砂丘で敵役達に襲われるのだが、これはどう見ても『女王陛下…』のオープニングシーンに対する景色と同じにしかみえない。

 

007/ユア・アイズ・オンリー

女王陛下の007

とまぁ、何から何までコノ作品は『女王陛下…』のリスペクトで出来ているのだが、作品そのものドラマとしてはどうかというと、本心を明かせばコノ作品のクオリティはそれほど高くない。アクションは良いのだが、肝心のドラマはシックリとはしていない。

 

グレン監督はやはり生粋のセカンド監督であって主体的なドラマは撮れない。

 

なので、主体よりもコンセプト寄り本来の007を撮らせれば無難にこなす事ができる腕はもっている。事実、この作品以降の『007/オクトパシー』(1983)からは本来の姿に戻ってアクション主体の映画をやって良い興行成績を残すのだが、最後にシリーズを手掛けた『007/消されたライセンス』(1989)でまた『女王陛下…』を連想させるドラマよりで撮るのである。

 

ポスター画像

 

今回はこれで終了。

 

BD&DVDで鑑賞。

 

 

 

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