ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
『ジュラシック・パーク』の原作者マイケル・クライトン原作の映画化。ニューメキシコに落下した衛星で村人全員が死亡する事態が起こった。これにアメリカ政府は3人の科学者と1人の医者を招集して。宇宙からの未知の生命から人類と社会を防疫するワイルド・ファイヤを発動した。衛星に付着していたソレの分析と奇跡的に生きていた赤ん坊と老人の共通点を探るが、分かったのは増殖し続けることだけだ。そしてソレは、まったく別の側面からも人類に危機を招く。ロバート・ワイズ監督。
久しぶりに観直したので、懐かしくなって 監督つながりで発作的に書いてみました。『スタートレック』の次は、この『アンドロメダ…』。
宇宙から飛来した「何か」が人類を危機に及ばす設定は。形を変えた宇宙侵略モノの系譜だけど、やり方は宇宙人ではなく、病菌であるところがキモ。第一次世界大戦の死傷者をうわまったとされる史上最大のパンデミック スペイン風邪も感染者の致命率(死亡率は人口数が母集団だが、致命率は罹患数が母集団。 致命率=死亡数/罹患数)は2%でとどまっている。これは当たり前のことで、宿主が死に絶えれば病菌も死に絶えるわけで、やはりどこかで歯止めがかかる。だから、感染率と毒性が同じに高いモノは存在しないし、人類を滅ぼすまでにはいかない。地球上の病菌ならそうなる。地球の暗黙のルールに従っているからだ。しかし、宇宙からやって来たとなると「地球のルールなんて知るか!」とばかりに毒を増殖するから、リアルな人類滅亡の危機が描けたのが最大の魅力だ。-- 実は先行する作品に小松左京の『復活の日』がある。原作だとあの病菌の原型は宇宙から来た設定になっている。
この映画で描かれた病菌の本質はタンパク質で構成されていない(らしい)もので、だから酵素も無い(らしい)のだが、真空と放射線にさらされている宇宙空間で生きているのであれば当然の設定だし、だから代謝効率ほぼ100%も当然の設定だ。そして個人的な考え(妄想)をすると、効率ほぼ100%で増殖する過程は同じ形が無限に増えるパターンのソレは自己相似が現れるフラクタルと同じで、だから特徴のひとつである「全てが再帰的(初期のパターン)に定義されるとは限らない」を思い出せば、最後に病菌がどうなるのかも、ある程度は納得できるカタチにはなってはいる。
そして、原作者であるマイケル・クライトンの特徴でもある「完璧なシステムは存在しない」もこの頃からしっかりと現れている。強固な防疫システムをもった施設でも、別な 方法でそれをすり抜けてしまう様がここから現れているのも興味深い。もちろん生命科学と環境への問題意識は当然だ。
でも、子供の頃テレビ放送で観て以来、原作も買って読んだくらい気に入っていたのだが、今、観直すとデジタル表記仕様の小道具が無いところとかはやっぱり若干の古臭さは感じてしまうし、特殊効果のダグラス・トランブルが作った3D風の施設の展開図や、ひとつのスクリーンに別の場所を同時に映すスリットスクリーン(マルチ画面)-- アメドラの『24 -TWENTY FOUR- 』みたいな画面。-- も。歴史的な興味は惹かれても、新鮮さが感じないところも、ちょっとだけツライ。むしろ実験でラットや猿が病菌の影響で倒れてゆくシーンが、逆にリアルと恐怖が感じられたのが個人的には新鮮だった。ーー imdbによると猿のシーンは二酸化炭素を注入して描いていて撮影が終わると呼吸装置で意識不明状態から蘇生させているが、それでも現在では動物虐待で撮影不可能なシーンだ。
ともあれ、原作のイメージをほぼ再現することができている映画の完成度は高く、現在でも、まだ面白いので機会があれば観て下さい。というのが素直な感情なのです。
参考
https://www.imdb.com/title/tt0066769/trivia?ref_=tt_trv_trv
The Andromeda Strain 1971 original film trailer