ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
アロッキーシリーズのライバルだったアポロに焦点を当て、彼の息子であるアドニス・クリードを主役に据えたスピンオフ作品『クリード チャンプを継ぐ男』の続編。アドニスのコーチになったロッキーの指導の下、世界チャンピオンに上り詰めたアドニスは、かつて父アポロの命を奪ったイワン・ドラゴが育て上げた息子ヴィクターの挑戦を受ける。ロッキーが止めるのを聞かずにヴィクターとの試合に挑むが、結果は散々たるものだった。反則行為により辛うじて勝利するも、明らかに彼は負けていた。心身ともに不調に陥ったアドニスは復活することができるのか?
1976年に公開された 『ロッキー』 はうだつの上がらない不器用な男が、同じく不器用な女性エイドリアンと思いを通わせることで、「自分がダメな男ではない」のを証明するためにチャンピオンのアポロと戦う。この第一作目から続くシリーズに中心にあるのは「何のために闘うのか?」だった。
2015年公開の『クリード チャンプを継ぐ男』は主人公のアドニスが見知らぬ父への愛憎をボクシングを通して描く成長の物語だった。もちろんそれはロッキーへの尊敬が多く含んで要る事には間違いはないが、そこにはやはり実話による黒人射殺事件を描いた『フルートベール駅で』を撮ったライアン・クーグラー監督が人種間だけでなく階層にもある、感情的なしこりをロッキーの物語(神話)を通して分かり合えようよするメッセージ(願い)があったのかもしれない。
『炎の宿敵』は脚本にスタローン本人が参加(ジュエル・テイラー共同)しているだけあってロッキー色の強い作品になってはいる。まさしくアドニスがロッキーの精神を受け継ぐドラマになっている。
しかし、それは従来のロッキーからは異色の方に流れている、「何のために闘う?」を描いているのはいつものところだ。しかし、今までのロッキーなら、そうした描写はロッキー側、今作で云えばアドニス側だけであったが、新しいのは敵役であるドラゴ側にもそれを描写してきた。その、二つの「何のために闘う?」が激突する工夫でドラマに奥行きができて、感動もより深くなるような作りになっている。
それと共に、前作『チャンプを継ぐ男』程では無いが、ロッキーよりも凝った映画的表現もある。今作では心身不調に陥ったアドニスの心境の表現にプールが使われる。水の中に潜っているアドニスのシーンは「心の痛み」を表現し、-- 分かりやすく痛みを暗に示すプロテスタントのルターの紋章を思い出させる黒い十字架もある。-- 一回目のシーンでは、そこで苦しむアドニスを描き、二回目のシーンではシャドーボクシングをさせることで「心の痛み」から立ち直ろうとする彼の姿を描くのだが、今までのロッキーではそんな比喩的な表現はないからだ。ロッキーならスローか回想しか映画的表現を使わないし、「心の痛み」なら、もっと直接的(エイドリアン)でそれを描く。
だから、この映画はその精神は承継していても、ロッキー・バルボアの物語ではなく、あくまでもスピンオフであり、アドニス・クリードの物語だ。
1985年の『ロッキー4/炎の友情』は公開当時批評家にはイロモノで評価されていたし、告白すれば、自分もクライマックスまでは面白かったのだが、最後のロッキーの演説(?)に白けていた思い出がある。時代だっとはいえ、あれに取ってつけたような政治的メッセージを感じたからだろう。
それにも関わらす33年後に作られた今作『炎の宿敵』は『炎の友情』のドラマが反転した構造にリターンマッチを連想してグっと感じたりもするのだ。我ながら身勝手だ。
そして、はじめて観終わった後、「感動した!」とか「面白かった!」との感情も湧かず、だからといって「駄目だった」とか「つまらなかった」訳でもない。簡単にいえば、「しんみり」としてしまった。妙にしんみりとしてしまった。静かな感情でしんみりとしてしまったのだ。色々思い浮かぶことはあるのだが、上手くまとめられない。
それを数日間、なんとか言葉にしようとアレコレと考えたが、見つからなかったのでこのまま終わります。
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