えいざつき ~映画ポエマーの戯言~

批評というよりも、それで思い出した事を書きます。映画、SFが多めです。そして妄想が暴走してポエムになります。

【ネタバレ無】〇のカッコよさ『AKIRA』

お題「最近見た映画」

ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]

 

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www.imdb.com

  

1988年7月16日、関東地方で「新型爆弾」が炸裂し、第三次世界大戦が勃発。それから31年後、2019年の新首都「ネオ東京」では、反政府ゲリラと軍(アーミー)との衝突が続いていた。

不良少年の金田は、山形・甲斐・鉄雄といった仲間と共に、オートバイでの暴走に明け暮れる日々を繰り返していた。ある日、暴走中に鉄雄がタカシと衝突したことで警察に捕えられ、金田は留置所で出会ったケイに一目惚れする。

一方、事故をきっかけとして能力に目覚めた鉄雄は、同時に自我を肥大化させ、病院から脱走。怒りに任せて力を振るうようになっていく。

金田はケイと共に、軍のラボに潜入して鉄雄を救おうとするが、暴走した鉄雄によって山形たちが殺されたことで、鉄雄との対決を決意する。

 Wikipediaからの引用

 

大友克洋監督

 

 

◆はじめに

いきなりだが、当ブログは、しばらくはアニメ映画について語っていきたいと思う。

 

そこで、最初は映画『AKIRA』についてやってみたい。ただ、これから語るのは批評や感想というよりも、この映画の新しさは何だったなのか?もうちょっと付け加えれば、この映画と共に大友克洋作品の魅力はもちろんその画力の高さなのだが、具体的にはそれは何なのか?を二つばかり自分が感じた視点で語ってみようと思う。そして、それはそのまま自分ことお年寄りの一人語りともいってもよい形になる。

 

そしてキーワードは〇だ!

 

◆カッコイイ!〇

意外に思われるかも知れないが、大友マンガが登場する以前は〇、(または曲線)は -- ここでは曲線を円、または球の両方を意味する上であえて記号の〇で表記する。-- カッコイイを意味する記号ではなかった。〇の記号は笑いかよくてファンタジックで抒情的な意味を表すモノとしての役割しか与えられてはいなかったのだ。それではどんな記号がカッコイイと思われていたかといえば、もちろんそれは鋭角であり、簡単にいえばカクカクだ。

 

そこで、『AKIRA』が登場する以前のマンガのキャラクターはどんなのがカッコよかったのかの例として同じ超能力者ジャンルに位置する聖悠紀原作『超人ロック』のキャラクターを見てほしい。(画像はAmazon

 

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カクカクしているでしょう。これが、大友克洋登場以前のカッコイイ!キャラクターだ。

 

もちろん、日本マンガにおいて最初からカクカクカッコイイキャラが主流ではなかった。『鉄腕アトム』のアトムや『鉄人28号』の金田正太郎は曲線つまりは〇がカッコイイキャラだった。それを塗り替えたのは1950年代後半から1970年代中期を席巻した劇画であり、劇画タッチのキャラクターたちだ。ピンとこなければいまだに現役で活躍中のさいとうたかを作品を思い出すと良いかもしれない。

 

劇画タッチとは写実的と評されたこともあったが、その特徴は鋭角のキャラクターたちにある、つまりはカクカクだ。

 

そのお手本になっていたのは洋画のノワールモノでのスーツ姿のギャングたちのスタイルなのだが、決定的になったのは1960年代初期に登場した俳優の三船敏郎ショーン・コネリーが演じたサムライ浪人とスパイエージェントのキャラクターだ。(画像はimdb)

 

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これ以後、劇画タッチはこの二人の影響から逃れなくなる。そして劇画の隆盛が落ち着いても曲線よりもカクカクがカッコイイ記号として定着してしまう。それを変えたのが『AKIRA』のキャラクターたちだった。

 

AKIRA』を発表する前に大友克洋はマンガやカルチャーに通じた人々にはすでに名は知られてはいた。しかし、一般的には認識は薄かった。そこに◯を意識したデザインのバイクで大都市を疾走する健康優良不良少年である主人公の金田はカクカクというよりも◯なカッコ良さを持っていたし、対する鉄雄や大佐も◯を基調にしたキャラクターだった。そしてそれは「カクカク=カッコイイ!」として定着していたマンガの記号を書き換えて「〇=カッコイイ!」に切り替わった瞬間でもあったのだ。

 

◆パワフル!な〇

また、これは多くの人が指摘するので、もはや耳にタコのレベルだが、大友克洋作品登場以後、超能力描写はより具体的になった。大友作品以前の超能力描写は統一されてなく観念的な描写だったのだが、大友が発表したマンガ『童夢』の登場はその後の超能力(サイコキネシス)の描写を激変させたくらいの衝撃だった。(画像は童夢

 

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このパワー描写も一言でいえば〇だ。もう少し付け加えると、「中心から何かパワーがほとばしり、それが球状に広がって押しつぶした」描写だ。

 

童夢』の登場は、それ以降のマンガ・アニメでの超能力のような得体の知れないパワーを描写するときにはこれが標準になってしまった。さらには実写映画でもそれが使われるようになる。例えばNetflix映画ヨン・サンホ監督『サイコキネシス -念力-』でのパワー描写にもハッキリと表れている。

 

マンガ、そしてアニメ『AKIRA』はそのパワフルな〇の表現をさらに押し進めたかたちになる。〇を歪ませることで光跡 -- バイクから出ているライトの光のこと -- をつくりアクションとして描写したり、〇を複数に組み合わせることでグロテスクな描写 -- 膨れ上がる鉄雄 -- やスペクタクルな描写 --破壊される都市や押し寄せる濁流 -- としてバライティに線画・動画へと変換させて提供して娯楽として昇華させたのだ。 

 

そして、これはあまり指摘されていなさそうなので協調しておくと、そうしたマンガ『AKIRA』の魅力を当時映画に参加していたアニメーター等が物語やキャラクターではなく、線画レベルでそれを理解していてマンガの雰囲気を再現できたところだ。

 

実はドラマとしての『AKIRA』はそれほど新しいモノではない。進化や超能力モノを題材にするとき誰もが思いつく物語だし、キャラクターもそれほど斬新さがあるわけでもない。

 

しかし、〇を駆使することで、そして音楽を担当した芸能山城組の楽曲も相まってオペラ的な出来上がりになったのが、このアニメ映画なのだ。

 


AKIRA - Teaser Trailer

 

 

  

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