ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
今日のポエム
そいつは「覗く」、そして我々も「覗く」。
映画とはポエムです!ポエムとは映画でもあります。それでは大いにポエムちゃいましょう!
そして、今回は
『透明人間』
キーワードは。
ミステリーですか?いいえスリラーです!
今回はネタバレスレスレ。
今作は透明人間の視点よりも襲われる被害者の視点のみで展開する物語で、ドラマからみれば加害者が被害者に対して暴力ではなく精神的に従属させようとするモラルハラスメントを描いている。今作でいえばエリザベス・モスが演じるセシリアが主人公でモワハラ被害者で透明人間がモワハラ加害者になっている。そうゆう視点でいえば、モワハラの気持ち悪さを描いている。
だから、トリックは前半ですぐに分かるのだが、それでも最後まで失速せずに結構に面白い!
それはトリックの面白さよりも、リー監督の手腕が優れているからと考えるしかない。個人的には前作『アップグレード』がガキ心をうずかせたリー・ワネル監督も実は水準以上の演出術をもっていたことになる。それを簡潔に言い表せば、今作はミステリー(謎解き)よりもスリラー(緊張)を強調した演出にすることで観客に没入感を優先させて、それが見事に決まっているからだ。
具体的には描写に主人公セシリアに対して「覗く」感覚があるのだ。
つまり、モワハラ野郎こと透明人間が、被害者ことセシリアをじっと見つめているように、観客もまたセシリアを見つめている関係が出来上がっている。
この妙な関係性での一体感で、観客のセシリアに対する共感の下準備は完璧で、いわゆる「志村後ろ!」の感覚で楽しめる趣向になっていて、それがクライマックスまで途切れていないのだ。
この「覗く」感覚はヒッチコックが『裏窓』でやった手法の応用だ。(画像はimdb)
もちろん、そのままではなく『裏窓』と今作『透明人間』の関係は逆転している。『裏窓』だと観客と一体感となるのは、覗く主人公が透明人間の方で、覗かれる犯罪者がセシリアだからだ。なので、応用なのだ。
また、この応用がある種の新鮮さを感じさせるので、観終わった後の満足も高い。
余談:この映画のベストな見方はIMAXで、それが難しくても音響はドルビーアトモスで絶対に観た方が良い。没入感が段違いで変わる!
劇場で鑑賞
The Invisible Man - Official Trailer [HD]