ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
明るい未来が約束されていると思われていたものの、理解しがたい事件によってその道を絶たれてしまったキャシー(キャリー・マリガン)。以来、平凡な生活を送っているように思えた彼女だったが、夜になるといつもどこかへと出かけていた。彼女の謎めいた行動の裏側には、外見からは想像のできない別の顔が見え隠れしていた。
シネマトゥデイより引用
映画とはポエムです!ポエムとは映画でもあります。それでは大いにポエムちゃいましょう!
今日のポエム
非対称をぶつけてやれ!
今回はネタバレスレスレの誉めモード。
注意:今回は核心の部分は避けていますが、本作を愉しみたい方には読まない事を薦めます。
本作は女性の性犯罪(暴力)の非対称を娯楽として描いたものであるが、男にはかなり問いかけがきつい内容になっている。そしてその後味はとても苦い。
そのところは自分が購読しているナオミントさんのブログを読んでいただける方が良い。ただしネタバレあり。
だからここでは、本作の苦さについて演出の方から語ってみたい。
実は表向きのポップでカラフルな感じとは裏腹に終始不穏で進行するからだ。
つまり物語の情報はすべて主人公にあって、それを観客には一つも教えてくれない。それで物語は進む。と言うよりも、ここには自らが読み解いてゆく事ができる物語など存在しない。
なので、それはまるで自分等観客と本作とで感情というカードを使ったポーカーゲームをやっている趣きがある。そんな不穏だ。
これと似た感覚に『ヘレディタリー/継承』(2018) 『ミッドサマー』(2019) などのアリ・アスター監督作品があるが、アスター監督は一応超自然的な題材なのに本作が取り上げているのは社会的な問題という違いはある。 -- 印象ならオシャレな感じがするのも同じか?
また実は自分。観る前は主人公がそのような目に襲われたので、そんな行動をしたのだと思っていたが、それは違っていて、襲われたのは主人公の無二の親友であり。またまた実は、その親友が性犯罪に襲われたとは本作では何の描写がない。具体的には回想シーンとか説明セリフとかがない。ただ主人公と登場人物達のリアクションでそれらを察するだけ。
こんな仕立て方をしたのは、おそらくは「性犯罪の非対称」を誰もが感覚として染み込ませるためにやったと見るべきで、そしてそれは見事に成功している。
さらにさらに実は、ポップで不穏だが、さり気なく「切なさ」も忍びこませている。本作はカラフルな色彩だが、それはどうやら、主人公の心情を表しているらしい。あの時から動いていないのだ。つまり主人公には「時が止まって」いる。
だからクライマックスはあの姿なのだ。
それはまるで戦闘服であると同時に死に装束も意味しているみたいな。(画像はIMDb)
だから、あのシーンでのカラフルな爪もそういう意味合いなら、お灸をすえるようなキツイ落しどころでも、どこかに切ないドラマもいく分か含んでいるのだろう。
その辺りを男の自分が言うのは傲慢とも感じているが。
劇場で鑑賞。