ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
今日のポエム
そして闘士になる。
映画とはポエムです!ポエムとは映画でもあります。それでは大いにポエムちゃいましょう!
そして今回のキーワードは
国家vs個人!
今回はネタバレスレスレ。
今作は2003年から戦争終結宣言の2010年までのイラク戦争の前半キャサリン・ガン事件を題材にした作品だ。そしてその顛末を書いたノンフィクション『The Spy Who Tried to Stop a War』の映画化だ。(自分は未読)
キャサリン・ガン事件とは2003年アメリカがイラクに大量破壊兵器を開発していると主張してイラク攻撃を国連安全保障理事会で軍事制裁決議を協議をしている際、アメリカが非常任理事国の動向を調べるために通信やメールを密かに傍受していた件で、それをシギント(通信、電磁波、信号等の、傍受を利用した諜報・諜報活動)で同盟国イギリスが協定としてそれを受け入れて、同じ行為をしていた事実を情報機関の職員だったキャサリンが新聞紙にリークして公になった流れだ。
もちろん、その後イラクには大量破壊兵器を開発・所有していた事実は無く、アメリカが間違った情報でイラク攻撃をしたのは今となっては周知の話だ。
なので、表面上はサスペンススリラードラマの作りにはなってはいるが、事件そのものは日本はともかく英米では名が知られているので、クライマックスまでの展開は誰もが知っている事件の裏側を描く実録モノだ。
そして、予想されるドラマ展開なら主人公が国家の不正に疑問を感じて葛藤してクライマックスで真実を明かしたり。また、描写の大体を、国家機密と情報開示の自由と愛国心の論争が描かれるのだか、本作はそれを微妙に外してくる。
何故なら、このドラマは主人公であるキャサリンを国家がひたすらに虐めるという展開になっていて、その虐めで最初は単なる義憤だった感情の彼女が次第にタフに変ってゆき最終的には本当の闘士となってゆく過程を描いているからだ。
だから、ココでの見所は主人公キャサリンを演じたキーラ・ナイトレイになる。
つまり、本作はキーラ・ナイトレイ座長の舞台を観ている。といった体になっているのだ。
そして、このドラマの愉しみ方はイプセンの戯曲『人形の家』と同じ、「演劇を通じて社会の矛盾を提起する」の問題劇として観るべきだろう。実は自分が観終わった感想が先の作品だった。
最後に国家がどうしてキャサリンにそんな虐めをしたのか、その理由が語られるそれが、しょうもないので愕然とするが、映画や小説にもなった日本の沖縄密約事件を知っている自分は「どの国でも権力が個人に暴力を振るうのは直接ではなく絡め手で人格と尊厳を貶める」という感を強くもった。
劇場で鑑賞。
Official Secrets 2019 (Official Movie Trailer)