ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
今日のポエム
それは英雄誕生前夜の物語
映画とはポエムです!ポエムとは映画でもあります。それでは大いにポエムちゃいましょう!
そして、キーワードは。
ホイ……テマァ!
今回はネタバレ無しの解説モード。
観て来てちゃったよ。IMAX!
本題に入る前に自分がダニエル・クレイグが演じるボンドについてどう見ているかについて書いておくと。これジェームズ・ボンドじゃないんだ。という認識。
要するに、自分等が知っているボンドが誕生する以前のドラマとしてクレイグボンドは描かれている。という認識。つまり、自分達が普段イメージしているジェームズ・ボンドは前はこんな感じだったんですよ~。をやっている、やってきたというのが自分の見立てだ。
つまりボンドという英雄神話誕生をやっている。という。
これが、かつてトラディショナル(伝統・保守)に好まれたヒーローが現代の価値基準にそったものとして考えられたのか、それともプロデューサーのバーバラ・ブロッコリが父であるアルバート・R・ブロッコリとの決別として考えられたのか、また両方なのか、今のところは分からない。それがハッキリするのは次作『ノー・タイム・トゥ・ダイ』以降なのだろう。
さて、自分は本作を2015年にも観ているのだが、その時に観た上映形式は横長のワイドスコープだったので、観ているうちに途中で画が整い過ぎてアクションとしてのスリルに欠ける事に気が付いた。ワイドスコープは横長なのでスケール感重視の画づくりが見栄えが良いのに本作では何故か消失点を意識した奥行きのある画づくりになっているからだ。(画像はIMDb)
だから、シリーズ史上最も予算をかけているにもかかわらずアクションが前作『スカイフォール』(2012) に及ばない出来、というよりも印象づけられている結果になっている。
その理由は、確信している訳ではないが、本作の撮影監督であるホイテ・ヴァン・ホイテマが意識して、そんな画づくりにしたのではないのかとも考えている。実はホイテマが本作でやった画づくりは、かつて彼が撮影を担当したジョン・ル・カレ原作・制作の『裏切りのサーカス』(2011)とほぼ同じアプローチだからだ。あの作品も消失点を意識した画づくりだったからだ。(画像はIMDb)
だから、まあ、本作は横長なワイドスコープよりも、変換された -- 本作では、あくまでも上映形式は35ミリフイルム撮影相当のワイドスコープ作品なのであって、IMAX上映とIMAXカメラでは撮影されてはいない -- 縦長なところがあるIMAXなら画がしまって、ものすごーく見栄えがいいのだろうな。と思っていたので今回の上映版をイソイソと観に行ったらドンピシャだった。
どう見ても傑作にしかみえない。(画像はIMDb)
しかも、品の良い格調の高ささえ感じてしまう。
そしてそれが、庶民が好むアクション映画でありながら、敷居が高くなっているところがある。だからボンド神話誕生前夜に相応しい作品になっている。
そうゆう視点で云えば本作の撮影監督のホイテマと監督のサム・メンデスはとても良い仕事をしたと思う。
でも、自分はジェームズ・ボンドにそんなのは求めていないんだ。
ル・カレ(スマイリー)とフレミング(ボンド)は違う世界のスパイなのだよ!
苦悩しながらも最終的には英雄として名が残る男よりも、「人を殺して捨てセリフ」的なボンドがハッキリ言って好みなのだよ自分は。
だけども、本作について思い違いをしている人達と、自身のボンド映画に対する感情を表明しておこうと考えて今回はこれを書いただけ。それだけ。
劇場で鑑賞。
SPECTRE - Final International Trailer (Official)