えいざつき ~元映画ブログだったポエマーの戯言~

批評というよりも、それで思い出した事を書きます。そして妄想が暴走してポエムになります。

ラストサムライ

お題「ゆっくり見たい映画」

ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]

 

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www.imdb.com

 

南北戦争で英雄になったネイサン・オールグレン大尉(トム・クルーズ)は、戦争が終わってからは銃のデモンストレーションをして生計をたてていた。ある日、日本の政府が西洋の戦術を教えるためにオールグレンを雇い来日させる提案をした。

シネマトゥデイより引用 

 

映画とはポエムです!ポエムとは映画でもあります。それでは大いにポエムちゃいましょう!

 

今日のポエム

日本人の道徳

 

 

個人的な話になるが。ひょんなことから子供に観せる映画を選ぶ事になった。まぁ、ただ好きなのを入れれば簡単にすむ話だし、ポンと思い出したのも数作あったのだが、お題は「子供にみせたい」作品であって、そこには自分が好きな子供向け作品ではない。硬い話は教育的見地が必要になるからだ。熟慮した結果、そこといちばん外側と自分が納得できるのを選んだが、ポンと思い出した面白系的な作品も捨てがたいので、勝手に夏休み特別企画としてチョコッと披露したい。

 

その第一回目が本作『ラストサムライ』。

 

対象年齢は12歳から17歳まで。

 

えっ、あれって子供向けなの?とか聞き直さないで。

 

どう見ても大人が観る作品じやないだろ。

 

だって史実無視のリアリティ0のなんちゃって日本のなんちゃってサムライの話だぜ。これは!

 

しかしその、なんちゃっての部分が本作のキモでもあるのもまた確か。

 

そして、ここで描かれるサムライとはもう明らかにアレなのは一目瞭然で、それをベースにして独自の世界観を作っているからだ。

 

そう本作はSF・ファンタジー

 

そんな視点から見れば本作は制作にも絡んでいる俳優トム・クルーズの妙な真摯さが伝わる作品でもある。だから感動するとしたらそこにしかないのだ。

 

そのアレとは実は、本作で描かれている武士道とは農政学者であり教育者でもあり、そして五千円札で知られる新渡戸稲造が書いた『武士道』の超簡易バージョンだからだ。

 

kotobank.jp

kotobank.jp

 

1899年に海外で発刊された新渡戸稲造の『武士道』とは葉隠の「武士道と云うは死ぬ事と見つけたり」のラディカルすぎる主張とは違い穏便でありそのイメージは「神道、仏教、論語、孟宗思想が混在していて」いるのを前提にして、かつ個別に「義、勇、仁、礼、名誉、忠義、切腹、刀」を語る構成になっている。それを簡単に説明すれば、つまりは道徳規範だ。

 

そして、ここが大切なポイントなのだが、この道徳規範は武士だけではなく庶民にも使われている。というのが新渡戸の一番伝えたかったところ。例えば謙譲の美徳とかがそれになる。

 

つまり西洋とは違う日本人独自の道徳観として『武士道』を著した。

 

もう少し詳しく書くと。西洋人の道徳がキリスト教・哲学を発端&基盤にしているのに対して、新渡戸がやったのは武士道というワードを使いながら、西洋の歴史と哲学などと照らし合わせながら日本の歴史・宗教・倫理を展開して独自の道徳観を西洋に紹介したのが『武士道』になる。

 

そして本作で描かれる武士道とはまさしくそれなのだ。

 

(画像はIMDB)

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ラスト サムライ

ちょっと身も蓋もない事を言ってしまえば、時代劇映画などで宣伝文句などで使われる「日本人の心」とは大体が新渡戸が提唱した『武士道』からだ。

 

 

気が付いただろうが、これはあくまでも理想であって、こんな日本人などは実在なぞしない。ましてや武士なぞいなかった。

 

いわゆるこれもなんちゃってなのだ

 

しかしこれは道徳であって、その理想を目指す日本人はいたと新渡戸は感じていたのは確かだ。

 

でなければこのような記し方はしなかったはずだ。

  

だから本作に対して、トンデモ日本史とか国辱とか批判する一方で、「感動しました」とか「アメリカ映画にしては日本の心を描いている」とかの賛辞が飛び出すのは、元々は新渡戸が海外に向けて書いたものを映画へと仕立て直しているからだ。

 

つまり逆輸入。

 

 なので、アメリカ本国よりも日本で大ヒットしたのはそんなところだからだ。

 

もしも、海外の道徳観からの価値基準による批判に違和感を感じたり思い悩んだりしたら本作を観て『武士道』を読めばある程度のギャップは埋められるだろうしそれらと歩み寄れる事もできるかもしれない。少なくとも『武士道』を読まなくても本作を観ておけばよいのだ。

 

今回はこんな感じで終了。

 

BDで鑑賞。

 

 

  

 

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