ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
1969年、自らを“ゾディアック”と名乗る男による殺人が頻発し、ゾディアックは事件の詳細を書いた手紙を新聞社に送りつけてくる。手紙を受け取ったサンフランシスコ・クロニクル紙の記者ポール(ロバート・ダウニー・Jr)、同僚の風刺漫画家ロバート(ジェイク・ギレンホール)は事件に並々ならぬ関心を寄せるが……。
シネマトゥデイより引用
映画とはポエムです!ポエムとは映画でもあります。それでは大いにポエムちゃいましょう!
今日のポエム
デジタルの豊潤さ
今回はネタバレスレスレの解説モード。
本作は実際にあった事件を基に書かれたノンフィクション(自分は未読)をデヴィッド・フィンチャーが映画化した作品だが、スリラーでもサスペンスでもない、おそろしく居心地が悪いドラマだ。
物語から語れば、謎の人物ゾディアックに三人の男が翻弄されて浮かばれない結果として展開して終る。
さらに付け加えると、同監督の『セブン』(1997) のような負のカタルシスに一挙に落ち込む快楽もなく、宙ぶらりんで感情の置き場に困る仕上がりになっている。
男達が、単にすべてを棒に振った物語よ!
それが本作。実話を基にしているから評価は高いが、これが完全なオリジナルだったら賛否両論は避けられないのは目に見えている。似たような作品ならいくつもあるだろうが、結末が見えない終始不穏のみで進行して不穏のみで終わるという落とし所は本作を含めてそんなに無いだろう。それはまるで身体にまとわりついた垢を落とさずにそのまましておく居心地の悪さ。
だけども人は最初と最後との感情が同じでは心を揺り動かされたとは思わない。感情が満足したとは考えない。
だから、こんな物語で人は合点&納得&満足(得をした) をする訳がなく、当然に映画を観た気分にはなれない。そこでどうするのか?
答え、ディテールを豊かにすれば良い。
人は物語が中途半端でもディテールだけは豊潤にしておけば何か見た気分(得した)になって満足してくれる。
ぶっちゃけ、物語が途中で終わった『スターウォーズ/帝国の逆襲』は不満は無いだろみんな!
さらにぶっちゃけると、同じく物語が途中で終わったヴィルヌーブ監督版『DUEN』に不満タラタラな奴はいただろ⁉
物語が中途半端でもディテールが豊かなら人は映画を観た満足感に満たされるのさ!
そうゆう事さ!(しれっと)
もっともディテールを豊か、豊潤にすればするほど金がかかる現実がある。現にそれをしたために会社を傾けた『クレオパトラ』(1963) や、会社そのものを潰してしまった『天国の門』(1980) なんてあるくらいだから。
だからフィンチャーはそのディテールをデジタル時代ならではのVFXで作る。これが特殊効果からキャリアをはじめた彼のスタイルだ。今や素人目にはリアルと作り物との違いが判別できないほどにVFXが発達した時代だからこそできる事だ。(画像はIMDb)
そのデジタル作品の嚆矢というべき作り手が彼だ。
かつて手間と金がかかるアナログ撮影法をデジタルへと変換を実践した。
これがフィンチャーマジック。
そして、同じくアナログ撮影をデジタルに変換した『ROMA/ローマ』(2018) のアルフォンソ・キュアロンや『アクアマン』(2018) のジェームズ・ワンの先駆け的な存在でもある。
自分等が本作を映画としての満足を認めているのは、豊潤だからなのだが、それはデジタルの豊潤さからなのだとも言える。
VODで鑑賞。