ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
19世紀末、東アフリカ。そこではイギリスが象牙貿易のため、鉄道整備に力を入れていた。橋を架けるため現地に呼ばれたパターソン中佐は、工事を邪魔する二頭の獣の存在を知る。その名は“ゴースト”と“ダークネス”、130名を越える人命を奪った、恐るべき人喰いライオンだった……。
Yahoo!映画より引用
今回はネタバレ無しのお勧め紹介モード。
今日のポエム
鮫の末裔
唐突だが、世に良く言われる、隠れた傑作と呼ばれる分類。
ネットではそんな作品に溢れている。もはや彼等に隠れる場所など無いくらいに。
でも、本作は正真正銘の隠れた傑作だ。だって誰も話題にしないんだもの。
傑作だから面白いのだろ?ならYES!
だって監督がスティーブ・ホプキンスなんだから。『プレデター2』(1990) 『ジャジメント・ナイト』(1993) 『ブローン・アウェイ』(1994) と派手なアクションだけではなく、登場人物等の葛藤もちゃんと描いて、小粒なから良い作品を連発しているキャリアなんだから。
評判があまり高くない、人気SF番組『宇宙家族ロビンソン』を映画化した『ロスト・イン・スペース』(1998) ですら、オリジナルからのイメージからはズレているだけで、SF作品として見るのならそんなに悪くない。
でも、当時はジョエル・シルバーやジェリー・ブラッカイマー制作のドッカンドッカンと派手目なアクション映画が主流で大ヒット時期でもあるので、ドラマ重視のホプキンスとは世間との相性がよろしくなかったみたいで、現在では、活動を映画からテレビに移して一線を退いた形に収まっている。まぁ、運の悪かったパターンだ。
そして脚本がウィリアム・ゴールドマン。
映画好きならスグに、『明日に向かって撃て!』(1969) 『大統領の陰謀』(1976) 『マラソンマン』(1976) 等々の名が残る作品群ばかり思い出してハズレが無い。ズバリ名脚本家だ。
個人的には『マジック』(1978) とか『ドリームキャッチャー』(2003) なども好きです。
本作はそんなキャリアの彼が1898年3月から同年12月にかけて英国領東アフリカ(現:ケニア) で起こった実話「ツァボの人食いライオン」を基にオリジナルで書いた作品だ。
そして、次の二つの理由が本作を隠れた傑作にしている理由だ。
〇 スリルとサスペンスとアクションとドラマを織り交ぜているから、「コレだ!」というパンチが足りない。
〇 脚本の話運びが巧みのためにスラスラと観れちゃうので面白いけど、スラスラなので皆の話題に上ることもない。
それを完結にまとめると、新鮮さが無い。
事実、その通りで、単純に例えると『ジョーズ』(1975) をドラマよりにしたのが本作。
というよりもお手本が『ジョーズ』です。と指摘しても反論できないところ。
本作では『ジョーズ』を基にして作られたショットがあって、さらにとどめはマイケル・ダグラス演じる、ある魅力的な人物が「ツァボの人食いライオン」の実話には出てこない架空のキャラクターであることから、それはどうみたって『ジョーズ』でロバート・ショウが演じたクイントから貰ったのが明らかだからだ。
どう見てもジョーズから上手に取った感がアリアリ。(オヤジギャグ)
でも、腐ってもゴールドマンなので『ジョーズ』にない要素もちゃんと入れている。
それは「自然に対する畏怖の念」。
橋(文明)を造ろうとする人に対する人食いライオン(自然) との戦いを描いたドラマが本作。
だから本作から動物パニックの面白さを見出そうとしたら肩透かしを食らう事になる。
また、そこから本作へと繋がる系統は、やはりアメリカの国民文学であるハーマン・メルヴィル『白鯨』になる。アレも石油発見以前の西洋文明を支えた鯨油とその元である鯨との戦いを描いているからだ。
それをまた一言でまとめると「品」がある。って事になる。
なるのだけれども、ゴールドマン脚本にあったであろう「品」をホプキンスはどうやら撮りきれていないところがあって、画づくりも演出も『ジョーズ』に頼っているところが、さらに隠れた感を強くしている。ホプキンスが監督としてのオリジナルらしき何かが実装されていたら、本作はもっと映画ファンに語り継がれる作品になったかもしれない。
でも単純に面白いのは今でも確かなんだけどな!
大切なことなので二回。
劇場で鑑賞。