ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
ストーリー
製鉄所の爆発事故によって全ての出口を閉ざされ、時まで止まってしまった町。いつか元に戻れるように「何も変えてはいけない」というルールができた。変化を禁じられた住民たちは、鬱屈とした日々を過ごしている。中学3年生の菊入正宗は、謎めいた同級生・佐上睦実に導かれて足を踏み入れた製鉄所の第五高炉で、野生の狼のような少女・五実と出会う。
スタッフ
監督・原作・脚本 岡田麿里
副監督 平松禎史
キャラクターデザイ・総作画監督 石井百合子
美術監督 東地和生
音楽 横山克
2023年製作/111分/G/日本
今回はネタバレスレスレの……解説モード
注意:今回は核心に迫る内容には言及していませんが、純粋に楽しみたい方には読まない事をお薦めします。
本作は脚本家としてのキャリアからもはやベテランの域に入り、監督作品としては『さよならの朝に約束の花をかざろう』に続く岡田麿里監督アニメーション作品。
イヤー、最高に醜い、気持ち悪い作品だった!
もちろん超褒めている。
まぁ、「醜い気持ち悪い」とは、ウ〇コドバッ!とか、目玉がドバーとか、はらわたから内蔵がドバドバこぼれ落ちるとか、なグロテスクな描写があるわけではなくて、登場キャラ達のエゴとエゴのぶつかり合いに合間にフェティシズムあふれる作画と動画が渾然一体となって差し出されているから。
それが最後は感動へと流れるのだから大したモンだよ。
実は自分は、映画に関してはアニメファンが高評価をしている『空の青さを知る人よ』とか『心が叫びたがってるんだ。』もそれほど高くはない。
『さよならの朝に約束の花をかざろう』のファンタジー描写にビビっとは来たが、はやはり初監督だったので、自分は先物買い的な評価もしたし、高いかといえば普通よりもチョイチョイと上な感じだった。
悪くはないけども、メチャ褒める作品でもない。
まあ、普通。
そんな立ち位置。
それが、本作ではリミッター解除の剛速球。
それがイイ。凄く良い。
元々、本作を作った岡田麿里はキャリアの最初からそういった物語とドラマを書いてきた脚本家だが、それを映像化するのが男性なので、どうもどこかにブレーキをかけて「良いお話」としてまとめようとするトコロを感じたが、ココではそうゆう雰囲気は無し、ナッシング。
美しいとか、感情の気持ち良さで、感動するのは悪になり切れない凡人の自分等には当然の感覚だからな。(唐突その一)
時代の閉塞感とかメッセージとかはどうでもいい。そんなもんきっと誰かが語るから。(唐突その二)
ヤッパリコイツ ↓ はお馬鹿キャラなんだよ!(唐突その三)
しかし、やはりオタクを相手にするビジネスはどうしてもそうなってしまうところがある。プラスの部分を残そうとしてしまう。
でもココではプラスはほぼいない。少なくともメインではいない。みんなマイナスだ。
マイナスに飛び込んだ奴ら!(タ〇ーマン風)
とは言っていても、それだと暗い情念がただ漏れなだけで娯楽にはならないから、やっぱりクライマックスにかけてはちょ~とだけプラスになる。それがアノチェイス。
ただ、ココ作画と動画は頑張ってはいるが、最大の見せ場としてはパンチがチョイと足りないかな。
さらにエンドクレジットで、歌う一人スペクタクルな中島みゆきを主題歌に添える事で何か感動作な雰囲気で締めている。
さっき、批判的に「醜い中に(-ω☆)キラリとプラスが見える」みたいな書き方をしたが、ココでは「醜いモノをできる限りかき集めて、それを蒸留したら、そこに(-ω☆)キラリの結晶が現れた」みたいな。
それが本作。
そうゆう意味では、岡田麿里脚本とドラマとは、映画『浮雲』(1955)の脚本家水木洋子やテレビドラマ『阿修羅のごとく』(1979)の脚本家向田邦子とほぼ同質とみるべきなのだろう。アニメじゃ珍しだけの事で。
劇場で鑑賞。