えいざつき ~元映画ブログだったポエマーの戯言~

批評というよりも、それで思い出した事を書きます。そして妄想が暴走してポエムになります。

晩酌で観た『殺人者はライフルを持っている!』

ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]

ストーリー

年老いたかつての怪奇映画スター、バイロン・オーロックは、自身が出演した『The Terror』の試写の場で、突然引退して故郷のイギリスに戻ると言い始める。若き映画監督のサミーは、外でオーロックを説得するも、若い者に道を譲ると聞き入れなかった。道路を挟んだ向かいの銃砲店、スコープでオーロックを見つめる男がいた。彼の名はボビー・トンプソン。一見身なりの良い善良な市民だが、銃と弾薬を買った後、自分の車に向かいトランクを開けると、そこには大量の銃が収められていた。

スタッフ

監督・脚本 ピーター・ボグダノヴィッチ
原案 ポリー・プラット ピーター・ボグダノヴィッチ
製作 ロジャー・コーマン ピーター・ボグダノヴィッチ
音楽 ロナルド・ステイン
撮影 ラズロ・コヴァックス
編集 ピーター・ボグダノヴィッチ

1968年製作/90分/アメリ
原題:Targets

Wikipediaより引用

 

今回はネタバレスレスレの解説モード

 

いつもの事だけども今回も軽めにゆく。

 

さてコノ作品。自分は初鑑賞だが、ジャンルとしてはスリラーに入っている伝説の作品て、かつ公開時期が前年の『俺たちに明日はない』(1967)と同じ、バイオレンスア、アンチヒーロー、アンハッピーエンドが特徴のアメリカンニューシネマの先駆け的な作品なのは知っていたので、そんな感じで観ていたら、どうも『俺たちに明日はない』や『イージー・ライダー』とは雰囲気が違うのだ。

 

アメリカンニューシネマというよりも!(桂〇枝風)

 

フランスヌーベルバーグみたいな!(桂三〇風返し)

 

この違い。

 

-- いまさらの余談だが、コノ作品は後世に強い影響を与えていて --だから伝説--「この描写はここからだったのか!」の発見が続くのだけども、それはすでに誰かが書いているはずなので今回はナシ。

 

機動戦士ガンダム

シャイニング

鑑賞後はコレを撮った『ラスト・ショー』(1971)、『ペーパー・ムーン』(1973) のピーター・ボグダノヴィッチの回顧趣味的な感性なのかと思ったが、imdbトリビアを読んだら妙に合点というか納得はした。

 

それは後回しで語るとして、コノ作品は2つの要素で成りたっているのは映画好きならすぐにピンとくるのは当然だろう。なにせ実際に起きたテキサスタワー銃乱射事件と代表作に『フランケンシュタイン』(1931)などのホラー作品を持つ怪奇俳優ボリス・カーロフの融合なので。

 

テキサスタワー乱射事件は1966年8月アメリテキサス州テキサス大学オースティン高本館時計塔に当時大学院だったチャールズ・ホイットマン武装して眼下の人々を次々と射殺していった事件で、あの時の米世相に深刻影響を与えた事件で、ココの流儀でしたがうのならチャールトン・ヘストン主演の『パニック・イン・スタジアム』(1976)はこの事件を基に撮られている。

 

-- さらなる余談だが、この実話は1975年に『テキサス・イン・パニックタワー』としてTVムービーとなって放送されたので、それよりもはやかった。

 

ボリス・カーロフについては自分には前述した『フランケンシュタイン』とその続編『フランケンシュタインの花嫁』(1935)『ミイラ再生』(1933)程度の鑑賞しかなく、だからまたimdbトリビアを引っ張り出して言えば、この時期カーロフは監督兼プロデューサーでもある、あのB級映画の帝王ロジャー・コーマンと契約関係にあって、それが2日残っていた。より具体的にはプロデューサーのコーマンはボグダノヴィッチに映画を撮らせる条件としてこう切り出した……

 

1.ボリス・カーロフの20分のシーンを2日で撮影。
2.コーマンが撮った『古城の亡霊』(1963)の映像を20分間使用。
3.カーロフ無しでさらに40分の場面を入れる。
4.125,000ドル(当時45000,000日本円)以下で制作する。

 

何だろ、この映画大喜利

 

しかし、ボグダノヴィッチはその大喜利をやり遂げた。それがスリラーなのに不思議な余韻を残す出来上がりになっている。

 

アイツがアイツをベシベシとやっているだけなのに。

 

これが、アメリカンというよりもフレンチの感覚に近いモノになっている。

 

実は、コノ作品の脚本のクレジットこそボグダノヴィッチになっているが、実質書いたのは『東京暗黒街・竹の家』(1955)や『最前線物語』(1980)のサミュエル・フラーなのだ。作品を撮る前にボグダノヴィッチがフラーに相談したところ、当初の案に不満をもったフラーは脚本料なしで書き上げた。

 

なので、ボグダノヴィッチ案のカーロフ退場はコレとは違っていたが、それを変えたのがフラーが書いた脚本で、あのベシベシだ。それがアメリカンというよりもフレンチな雰囲気を漂わせている。

 

というよりも、フランス映画人とその周辺の人々が大好きなフィルム・ノワールなので、その一翼を担っていたサミュエル・フラーが手掛ければそりゃあそうなる。

 

-- フィルム・ノワールとフランス映画の関係と影響については多くの研究があるだろうし、自分のような者が語るには力不足なのでこれも無視。

 

そんな妙ちくりんな逆転現象が起こっているのがコノ作品で、伝説の一端となっている。

 

 

殺人者はライフルを持っている!

そして、それはボグダノヴィッチだけではなく、コマーン、フラーなどの才能のコラボレーションとしての伝説的名作なのだろう。

 

映画ファンには白々しい物言いなのは百も承知!

 

CATVにて鑑賞。

 

 

 

 

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