ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
ストーリー
公園で一瞬目を離した隙に娘が行方不明になってしまった刑事ロークは、そのことで強迫観念にかられ、カウンセリングを受けるようになるが、正気を保つために現場の職務に復帰する。そんなある時、銀行強盗を予告するタレコミがあり、現場に向かったロークは、そこに現れた男が娘の行方の鍵を握っていると確信する。しかし男はいとも簡単に周囲の人びとを操ることができ、ロークは男を捕まえることができない。打つ手がないロークは、占いや催眠術を熟知し、世界の秘密を知る占い師のダイアナに協力を求める。ダイアナによれば、ロークの追う男は相手の相手の脳をハッキングしていると言う。彼女の話す“絶対に捕まらない男”の秘密に混乱するロークだったが……。
スタッフ
監督・原案・編集:ロバート・ロドリゲス
製作:レーサー・マックス・ロドリゲス ジェフ・ロビノフ ジョン・グラハム マーク・ギル リサ・エルジー ロバート・ロドリゲス
製作総指揮:ウォルター・ジョステン パトリック・ジョステン ジョーダン・ワグナー ギャレス・ウェスト クリストファー・ミルバーン マーク・ウィリアムズ ピーター・タッチ クリステル・コナン マイトレーヤ・ヤスダ クリスタル・ブルボ ビンゼント・ブルッツェーゼ ベス・ブルックナー・オブライエン ジェームズ・ポートルース ジョシュア・ソーン
脚本:ロバート・ロドリゲス マックス・ボレンスタイン
撮影:パブロ・ベロン ロバート・ロドリゲス
美術:スティーブ・ジョイナー ケイラ・エドルブラット
衣装:ニナ・プロクター
音楽:レベル・ロドリゲス2023年製作/94分/G/アメリカ
原題:Hypnotic映画.comより引用
今回はネタバレスレスレの誉め解説モード
注意:今回は核心に迫る内容には言及していませんが、純粋に楽しみたい方には読まない事をお薦めします。
拾い物的な面白さだった。
「拾い物的」とは、過剰な期待はしないで見たらズキューンと楽しめるくらいの出来にはなっている。
感情のリスクヘッジを取っておけば感動のリターンが大きく帰ってくる…みたいな。
そんな感じ。
まぁ、メッセージとかはなくて、完全に展開のみなので脚本が主体となった面白さになっている。
いい添えておくと。この「脳をハッキング」するという原題にもなっている『ヒプノティック(HYPNOTIC)』は訳すとまさしく催眠術なのだけども、コレをミステリーやスリラーで多用しすぎると、まさしく「何でもあり」になってしまってサスペンスが生まれにくくなり、最終的には「何だよコレは!」な珍作・怪作になりかねない設定で意外と取り扱いが難しい。
皮を剥くときに、それが下手くそで綺麗にならなくて自らの不器用さに絶望したくなる感じ。
どうして、ソレが断言できるかと言うと、この設定はすでにミステリー作家松岡圭佑の同名小説の映画化である稲垣吾郎主演『催眠』(1999)でやっていて、ソノ剥け方が酷かったのを先に知っているから。
まさしく、何だよコレ!な映画だ。
本作では、そうならないようにミステリーな謎解きよりも親子愛を軸において物語を展開させていてクライマックスに向けてオチが剥けてゆく感動がちゃんと担保されている。
綺麗に剥けるっていいよね~(意味深)
即ち、ココでも。設定・展開がどんなトンデモでも愛が描かれていれば本棚の裏でも大丈夫!なインターステラーメソッド(←勝手に命名)がここでも証明されている訳だ。
論旨が前後してしまったが、本作はその設定から本来なら『インセプション』系のSFスリラーに分類されるだろうけども、自分としてはコレを撮ったロドリゲス監督は60年代後半から70年代後半までチョコチョコとあったマインドコントロール系の陰謀スリラーに影響というか敬意をこめていると感じた。
マインドコントロール系陰謀スリラーとは『影なき狙撃者』(1969)から『パララックス・ビュー』(1974)『テレフォン』(1977)など自分の意思とは関係なく敵方のコントロール下に入って要人を暗殺ゆく陰謀系作品群のジャンルのひとつだ。今では影を潜めたが70年代にはこんな陰謀スリラーやアクション作品が多くあった。それが見世物として成立した背景には、実際にあった1963年ケネディ大統領暗殺事件や1972年ウォーターゲート事件あったからでもあり、また当時は世界的な超能力ブームもあって政府機関もそれらを研究していたという世相がある。
まぁ、今ではすっかり廃れてしまったが。
どうも本作はその流れを意識している……らしい。
特に顕著に現れているのは『パララックス・ビュー』の影響が見え隠れする。
なんでアイツ等赤いんだよ!は多分『パララックス…』から……ダヨな。
そんな、公開当時は話題性があった『パララックス…』も世相ムーブが過ぎた頃は変な映画として扱われていた時期もあったが、最近では撮影監督のゴードン・ウィリスのルックこと画づくりも相まって今では味わい深い評価に落ち着いている。
一晩寝かしたカレーは美味い!みたいな。
だから本作も一時は忘れられても、ひょんなことから再評価されるだろう。
……多分。
今回はこれで終了!