ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
いよいよ公開される『ゴジラ-0.1』にちなんで、ゴジラ話でもやろうかとも考えたのだけども、今回は準備が足りなかったので、平成ゴジラシリーズの路線を決めたであろうコノ作品に影響を与えたアノ小説と小説家についてチョイと語ってみたい。
では、まず平成ゴジラシリーズとは、1984年『ゴジラ』から1995年『ゴジラvsデストロイア』までの期間を指す。
余談だが、それ以前は昭和ゴジラシリーズ。平成以降は2000年代に公開されていたのでミレニアムと区別されている。
そして平成シリーズの顕著な特徴はゴジラは原子力を糧としているという設定だ。まぁあとは、三枝未希という超能力女性がいつも出演しているところか。
1984年の『ゴジラ』って昭和なのにどうして平成なのとか聞くな!
その84年版は内容がゴジラにポリティカルな要素を加えたリアル路線で、実際に戦術核のくだりは興味深いのだけども、それだけでは保たないと判断されたのか、都市防衛の目的で建造されたスーパーXなるメカが設定・登場したが、これがデザインとドリンク剤か!とツッコまれるネーミングだったので、当時は違和感&ダサい評価もあった。
でも、個人的には好きなんよ。
ソンナコンナで、(ウヤムヤ) 84年版はヒットはしたもののディープなゴジラファンからは評価が高くなかった。その次がコノ作品で撮ったのは『ヒポクラテスたち』(1980)や『さよならの女たち』(1987)の大森一樹で、作風としてはキッチュな感覚と疾風感を感じさせるところがあって、コノ作品もアクション映画風に仕立ててスーパーX二号機として再登場したが、これも違和感もなくマッチしてゴジラ作品に新しい雰囲気をもたらした。
物語をかいつまむと、84年版で設定された、原子力を糧にしているのをさらに発展させて放射性核種を無効化できるゴジラ細胞をめぐり、日本と国際バイオメジャーと某国とが争奪戦を繰り広げる中でゴジラと新怪獣ビオランテが絡む流れになっている。
ここからが本題で、実はコノ作品を撮る前に大森はある冒険小説の映画化を構想していたが、それが実現できなかったので、アイデアのいくつかをコノ作品で使っているのだ。
それはSF作家、山田正紀著『謀殺のチェスゲーム』というアクション仕立ての近未来ポリティカルスリラーだ。
内容は、近未来の日本。アメリカ中心の軍事力が揺らぎ、米・ソ・中の核大国の力の均衡が保たれた国際状況下で日本に新戦略専門家(ネオステラジスト)なる職業が誕生、重要視された。
新戦略専門家とはイデオロギーよりも数学的思考で問題を片付けてゆく者達で、その彼等が北海道の沖合いで行方不明となった最新鋭対潜哨戒機を巡って二つの組織に属する新戦略専門家と彼等の手足となる工作員が対立する物語となっている。
コノ作品を観ている者ならピンときただろうが、あらゆる手段を使ってゴジラに対処する黒木特佐は『謀殺のチェスゲーム』での新戦略専門家だし、某国のエージェントを追いかける権藤一佐は工作員からヒントを貰っているのはハッキリと分かる。
そしてまた作中で、某国のエージェントを足止めするために黒木が情報操作をするのだが、これもまた『謀殺の…』からアイデアを得ている。
要するに『謀殺のチェスゲーム』が無かったらコノ作品は別の展開になっていたかもだ。
これだけではなく、山田正紀の作品群は発表後に様々なクリエーター達に様々なインスピレーションを与えたが、映画の枠でなら、ヤッパリこの↓作品。
山田作品に謎のテロリストが首都の中枢部を制圧する『三人の「馬」』(旧題:虚栄の都市)だろうな。
『パト2』とOVA『二課のいちばん長い日』はこれからでしょ。
押井は山田作品に衝撃を受けていることを告白しているし、自作の映画『立喰師列伝』(2006)に出演させている。
そんな山田正紀のポリティカルスリラーの何が画期的かつ魅力的だったのかと言うと、物語にイデオロギーなメッセージをできるだけ廃してシミュレーションとして畫いてゆく手法が読者に受け止められたから……だろうな。
さらにどうして、イデオロギーを廃したのが新しかったのかと言えば、1970年11月に作家の三島由紀夫が自衛隊にクーデター決起を促して割腹自殺を遂げた『三島事件』なるものがあって、そうゆうものを出すのはタブーされていたところがあったから。
それをやぶったのがSF作家ならではの思考で書いた山田正紀が認められた。
後、チョイ付け足すと山田、押井、大森三人が同じ世代であるところもあるだろう。
とにかく、ジャパンのサブカルに隠然たる影響を与えた山田作品だが、自身の作品で映像化されたのはOVAで『機神兵団』と2時間サスペンスドラマ枠での『おとり捜査官』くらいしかなく、あとは短編くらい……カナ?
今回は三点リーダ使いまくりだなー。
まぁ、『vsビオランテ』からかなり脱線したけども、これにておしまい。