ここでは題名と名称を恣意的に表記します。[敬称略]
中学生のこころは学校に居場所がなく、部屋に閉じこもる日々を送っていた。ある日突然、部屋の鏡が光を放ち、吸い込まれるように中へ入ると城のような建物があり、そこには見知らぬ6人の中学生がいた。さらに「オオカミさま」と呼ばれるオオカミの仮面をかぶった少女が現れ、城のどこかに隠された鍵を見つけたらどんな願いでもかなえると告げる。7人は戸惑いながらも協力して鍵を探すうちに、互いの抱える事情が明らかになり、徐々に心を通わせていく。
シネマトゥデイより引用
今回はネタバレなしの褒めモード
ちまたでは評価が高い本作は、自分の中ではウェルメイドな作品だと思っている。
だって、原恵一監督作だし。
でも、そんな言い方をしつつも、その定義については曖昧に使われている。
だから、今回はウェルメイド映画についてからはじめる。
ウェルメイドって何ですか?
直訳すれば「よくできた」だし、他の言い方だと、「がっしりと釣り合いのとれた」とかで言われているが、どうもピンとこない。
だから、今回はぶっちゃける。
ウェルメイド映画とは、テーマや設定に新味がなく、展開もバレバレで、どんな終わりかも予想できるが、何故か最後まで観てしまう作品群だということを。
尖ったところがまったくナッシング!
早い話。ウィルヌーヴやチャゼルのやつはウェルメイドじゃないし、アニメなら押井や新海がウェルメイドじゃないてっのは直観でわかるだろ?そうゆうことだ。
だから、メッセージの強烈さやアイディアではなく、ほぼストーリーの運び方と各シーン&カットの描写のチョイとしたツイストぐあいで作品の成功が決まる。というそれしかない。
ぶっちゃけ、寅さんや釣りバカと同じ。(← はい、コレ伏線)
それが、ウェルメイド映画。
そして、本作もその、ウェルメイド映画だ。で、なきゃこんな回りくどいのなんかやってられるか!
ずっと前に自分はおなじ原の前作『バースデー・ワンダーランド』(2019) でケレン味のアニメであえて松竹大船調をやろうとしているのでは?と推理したが、本作を観るかぎりそれは間違ってはいなかった。
だって~松竹大船調だもん!
それにコレ松竹映画だし。
ウェルメイドも松竹大船調もおんなじ。対して変わらん!
だって~、半分まできてこの孤城の秘密がほとんど分かっちゃたしさ〜。城がセラピーの体をなしていて、アヤツはセラピストの役割を与えられているのは薄々っと予想できるし。
でも、ガッツリファンタジーで、どうも地に足がついてフワっとした出来上がりだった前作に対して本作は少年少女達のリアルな悩みというよりも苦しみを描いているので、感動が地についている感がハッキリとある。
その根底にあるのはリアルな観察眼に基づく描写がチャンとあるからだろう。
リアルな観察眼とリアルな描写は似ているようで違う。クリームシチューとビーフシチューと同じくらいに違う。前者はデフォルメがあるが、後者はリアルなためにデフォルメされるインパクトは弱い。もちろん現実は後者なのは百も承知。
だが、これは映画だ。フィクションだ。
我々はリアルに裏打ちされたデフォルメに反応することで心を動かす。
ウェルメイドとはそうゆうことでもある。
そうゆう意味では本作はよくできたウェルメイド。
でもまぁ、裏を返せば。ウェルメイドはファンタジーよりもリアルに軸をおかなければ魅力的にはなならいし、ドラマとしてはミニマムだ。
そして、リアルよりもビジョンが好みの自分からはチョイとズレているかも。
でも、それが原作品だし、今回は充分に堪能したぞ。
劇場で鑑賞